パンデミックが開けたアメリカ 整備されつつある映画界の「新しいルール」

整備されつつある米映画界の「新しいルール」

 先週末の動員ランキングは、日活配給、幸福の科学出版製作の『美しき誘惑 現代の「画皮」』が、土日2日間で動員11万3000人、興収1億4000万円をあげて初登場1位となった。公開から4週続けて首位を守っていた『名探偵コナン 緋色の弾丸』はここにきて息切れ。土日2日間で動員9万3000人、興収1億3500万円をあげて2位に。累計興収は62億118万4450円。5年前の『名探偵コナン 純黒の悪夢』(最終興収63.3億円)と4年前の『名探偵コナン から紅の恋歌』(最終興収68.9億円)の間の成績に収まりそうだ。

 東京や大阪が緊急事態宣言に入る前に公開できた『名探偵コナン』はまだいい。緊急事態宣言下に入ってから公開された先週末3位の『るろうに剣心 最終章 The Final』の累計興収は26億3769万4310円。この数字は、いずれも2014年に公開された前作『るろうに剣心 伝説の最期編』の約60%、前々作『るろうに剣心 京都大火編』の約半分という成績だ。

 さて、現在の一部自治体による他業種とのバランスを著しく欠いた理不尽な要請だけでなく、遅々として進まないワクチン接種、東京オリンピックに振り回されているとしか思えない政府の場当たり的の方針と、昨年からずっと行政に振り回され続けている日本の映画界とは対照的に、劇場営業の再開が本格化しているアメリカでは、「パンデミック以降」の新しいルールが急速に整備されつつある。

 まず、昨年は『ムーラン』や『ソウルフル・ワールド』の劇場公開を見送りディズニープラスで独占配信、今年に入ってからも『ラーヤと龍の王国』を劇場公開と同時にディズニープラスで配信するなど、新作がリリースされる度に劇場サイドからの反発を受けてきたディズニーは、5月28日公開(日本では配信より1日早い5月27日に劇場公開)の『クルエラ』、7月9日公開の『ブラック・ウィドウ』、7月30日公開の『ジャングル・クルーズ』を最後に、8月からは現在の劇場とディズニープラスでの同時公開を停止。昨年の『ムーラン』からの方針はあくまでも「パンデミック下の一時的な措置」であったとして、8月13日公開の『フリー・ガイ』、9月3日公開の『シャン・チー/テン・リングスの伝説』から、ディズニープラスでの配信は劇場公開の45日後にスタートすると表明した。

 この「45日後」という日数は、今年3月に米パラマウントが北米でローンチしたパラマウントプラスにおける、パラマウント作品の劇場公開から同サービスでの配信までと同じだ。昨年、ユニバーサルは大手シネコンチェーンのAMCやCinemarkと「17日後の配信」という合意を得たと報じられたが、そこから大幅に劇場サイドに譲歩したこの45日という日数がここにきて頻繁に取り上げられるようになっている。自社サービスによる独占配信か、他のプラットフォームにのせた配信か、サービス内の無課金配信か、有料配信か、それぞれの条件によって異なってくるのだろうが、昨年までと違うのはメジャースタジオ各社の足並みが揃いつつあるのと、劇場サイドとの歩み寄りが見られるところだ。

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