菅田将暉「もうダメってこと?」が虚しく響く 『コントが始まる』余韻残るベストエピソード

『コントが始まる』余韻残るベストエピソード

  努力は必ず報われるのか、それとも報われないこともあるのか。そんな問いを春斗が里穂子に投げかける場面があった。マクベスがこれまで費やしてきた時間は未来に生かされるのか、それともぜんぶ無駄になってしまうのか。

「すぐに結果に結びつかなくても、後から遅れて結果が出る努力もあると思います」

 高校時代の華道部の経験がつい最近役に立ったのだと、そこには嬉しそうに語る里穂子の姿がある。そして彼女は断言する。「マクベスでやってきた10年間は、決して無駄ではない」。春斗は照れながら「前から思ってたんですけど、けっこう話長いですよね」と言って卑屈になる。

 この場面、思い出さずにはいられないのが、『花束みたいな恋をした』で交わされるあるセリフだ。2014年のワールドカップでブラジルがドイツに7点取られて負けたとき、ブラジルのキャプテン、ジュリオ・セザールが放った言葉「我々のこれまでの道のりは美しかった。あと一歩だった」。その引用をして麦(菅田将暉)から絹(有村架純)へと伝えられる言葉。その反転のようにどうしても見えてしまう、重なる青春の終わりの肯定。マクベスは解散する。でも決して無駄ではなかった。道のりは美しかった。あと一歩だった。

 マクベスの解散にすべての気を吸い取られてしまいそうだが、第5話はつむぎ(古川琴音)の決断の物語でもあった。無邪気に可能性を信じて夢を追いかけるマクベスを見て、自分は何もない空っぽな存在なのだと彼女は憂う。しかしそれを聞いた瞬太は、「弱ってる人にミートソースつくってあげたりさ、粉チーズまで用意できる人の中身が空っぽなはずないよ」と彼女の生き方を全面的に肯定してみせる。第5話は瞬太=神木隆之介の存在が本当に救いだった。ほっと安心したような、それでいて不安が残る、つむぎの微笑が心に響く。彼女もまた、姉と離れることを決めた。

 20代の後半、どこからともなく一歩踏み出すことを強いられゆくマクベスと姉妹。『コントが始まる』は解散と離別を決めた“後”という、未知なるアディショナルタイムに突入した。

■原航平
ライター/編集。1995年、兵庫県生まれ。Real Sound、QuickJapan、bizSPA!、芸人雑誌、logirlなどの媒体で、映画やドラマ、お笑いの記事を執筆。Twitterブログ

■放送情報
『コントが始まる』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00〜22:54放送
出演:菅田将暉、有村架純、仲野太賀、古川琴音、神木隆之介
脚本:金子茂樹
演出:猪股隆一、金井紘(storyboard)
チーフプロデューサー:池田健司
プロデューサー:福井雄太、松山雅則(トータルメディアコミュニケーション)
主題歌:あいみょん「愛を知るまでは」(unBORDE/Warner Music Japan)
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/conpaji/
公式Twitter:@conpaji_ntv

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