『おちょやん』いよいよ最終週へ 千代としてたくましく生き抜いた杉咲花

『おちょやん』たくましく生き抜いた杉咲花

 杉咲の朝ドラ出演は『とと姉ちゃん』に続き本作が2作目で、初の主演を務めた。彼女を強く印象づけたのは、何と言っても日本アカデミー賞で助演女優賞と新人俳優賞をW受賞した映画『湯を沸かすほどの熱い愛』での迫力ある演技だろう。いじめられっ子で不登校寸前に陥った高校生・安澄役を演じ、そんな彼女が踏み出す大きな勇気の一歩の連続を体当たりで演じてくれた。

 宮沢りえ演じる母親・双葉とぶつかり合うシーンが度々描かれたが、一歩も引くことのない見事な“対峙”を見せつけてくれた。杉咲はこの「対峙」シーンで自身の心情をぶつけるのはもちろん、そこで相手の感情を引き出し揺さぶり呼応するのが抜群に上手い。

 そういった意味でも、テンポの良さや間合いが命だと言える喜劇女優、しかもその成熟過程を演じる本作の役どころは杉咲にとってうってつけだったのではないだろうか。作中、とても自然で、板についている千代の話し言葉の河内弁と大阪弁も、撮影前に勉強し習得したというのだから驚きだ。

 また、実年齢も23歳と若く童顔な杉咲が、どうやって1人の女性の半生を演じ分けていくのか楽しみだったが、声のトーンや、ささやき声の差し込み、所作とその速度、何より他者への眼差しで“見守られる側”から“見守る側”へ、“お母ちゃんという存在を慕い続ける側”から“大阪のお母さんとして親しまれる側”への変遷を見事に積み重ねて見せてくれた。

 いよいよ最終週では、千代が道頓堀に戻り、これまでお世話になった懐かしの人たちとの再会シーンが描かれるようだ。千代が人生の苦楽を味わった道頓堀で、離縁した一平(成田凌)と久々に会い、どんな言葉を交わすのか。きっと彼女らのことに、舞台上でまた本心が聞けるに違いない。“彼女を彼女たらしめた”人たちとの再会が、今の千代にどんな感情を湧き上がらせ、変化をもたらすのか、最後の最後まで泣き笑いさせられながら見届けたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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