狩野とコタローの優しさが今こそ必要? 『コタローは1人暮らし』明らかになった悲痛な事実

『コタローは1人暮らし』の悲痛な現実

 コタローのもとにも早く母上の迎えが来るようにと願って間もなく、視聴者の心を打ちのめす事実が明らかになる。ピクニックから帰ってきたコタローを、生活費を手渡しに来た弁護士の綾乃(百田夏菜子)が待っていた。「優しい人からの寄付」という名目でコタローに手渡されるお金の正体は、コタローの母親の保険金。つまりコタローの母親はもう……と、想像するほかない。

 綾乃の来訪をめいっぱい歓迎し、もてなすコタロー。それは、コタローが綾乃にできるせめてものことであるからだという。綾乃に優しくすれば、自分の気持ちはきっと「優しい人」に伝わるだろう、と。

 あるいは、優しい嘘をつく綾乃への、優しさのお返しなのかもしれない。コタローが綾乃に渡した手土産に入っていた日記。そこには、身長、体重、足のサイズ、その日あった出来事が書かれている。「あの子がどこまで知っていて、どういう意図でそれを書いてて、俺らにくれるんだろうな」ーー所長の鈴野(光石研)が、つぶやくように綾乃に問う。

 コタローはきっと、会えない「優しい人」に知ってほしいのだ。自分が日々大きくなり、毎日きちんと、楽しく生きていることを。それを伝えたい相手など決まっている。コタローは、迷子になったかつてのように母上を待っているのだろう。今にも消えてしまいそうな、わずかな希望を信じながら。

 翌朝。ピクニックで写真に映ることを拒んだコタローに、あの日の絵を描いて渡した狩野。ささやかな優しさを返し合う日々のなかで、コタローは今日も笑っている。

■新 亜希子
アラサー&未経験でライターに転身した元医療従事者。音楽・映画メディアを中心に、インタビュー記事・コラムを執筆。Twitter

■放送情報
『コタローは1人暮らし』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:30~0:00放送
出演:横山裕、川原瑛都、山本舞香、西畑大吾(なにわ男子/関西ジャニーズJr.)、百田夏菜子(ももいろクローバーZ)、生瀬勝久、光石研、峯村リエ、大倉孝二、イッセー尾形、出口夏希
原作:津村マミ『コタローは1人暮らし』(小学館)(『ビッグコミックスペリオール』で連載中)
脚本:衛藤凛
音楽:篠田大介
ゼネラルプロデューサー:三輪祐見子(テレビ朝日)
プロデューサー:都築歩(テレビ朝日)、尾花典子(ジェイ・ストーム)、松野千鶴子(アズバーズ)、岡美鶴(アズバーズ)
監督:松本佳奈 ほか
制作協力:アズバーズ
制作著作:テレビ朝日、ジェイ・ストーム
(c)津村マミ/小学館(『ビッグコミックスペリオール』連載中) (c)テレビ朝日

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