イベントはOK、オリンピックもまだやるつもり、でも「映画館には休業要請」の怪

 イベントは人数制限をした上で開催OKで映画館には休業を要請、さらにこの状況にあってもたった11週間後に同じ街でオリンピックを開催する大前提という、まったく理解不能な都の方針は、国の対策よりも少しだけ厳しくしたという「何かをやってる感」を出すためのアリバイ作り以外のなにものでもないだろう。映画興行はそんな政治的パフォーマンスの犠牲となってしまった。

 百貨店やショッピングセンターの運営会社の中には独自の判断を探る動きもあるようだが、はたして全興連は5月31日(言うまでもなく、そこからさらに伸びることも十分にありえる)までの休業要請をこれまでのように丸呑みすることになるのだろうか? 過去に本コラムでは、Netflix映画やディズニープラスで同時配信されるディズニー映画が劇場公開される際、全興連の働きかけによって加盟劇場での作品公開を拒否してきたことについても触れてきた。お上には絶対に逆らわず、新興勢力は断固として排除ーー都の要請が大いに理不尽であることはここまで述べてきた通りだが、今問われているのはそんな全興連の体質かもしれない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

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