坂元裕二が描き続ける“割り切れない関係性” 『大豆田とわ子と三人の元夫』は集大成に

坂元裕二が描き続ける“割り切れない関係性”

 今のところ気になるのは、とわ子の母親である。元夫3人ともが、自分の母親のように思っていたという、その存在の大きさとはどんなものだったのだろう。そして、その母親が残した言葉、「お母さんて大丈夫すぎるんだろうね。ひとりでも大丈夫な人は大事にされないもんだよ」と、それを受けてのとわ子の「ひとりでも大丈夫だけど、誰かに大事にされたい」というやりとりが妙に残るのである。

 このとわ子が思い出したワンシーンは、1話だけに関わるものかもしれないが、とわ子の生き方やドラマ全体にも関わってくるような気がしている。

 それ以外にも、とわ子にも、元夫たちにも、それぞれに恋の予感を感じさせる出会いなども描かれるのも気になるところだ。新たな出会いもあるが、かつてのパートナーに対しての気持ちも消えているわけではない。そこには、昔から恋愛の話として、したり顔でよく使われてきた、かつての恋愛をした相手の記憶を、「上書き」するか、「消去」するかなどという表現で表してきたこととも違ったもの、簡単に誰かと誰かの過ごした時間が終わったり消えてなくなるわけではないことが描かれそうである。こうしたきっぱりと割り切れない関係性も、昨今の坂元裕二の作品から漂っていることのようにも思えるのだ。

■西森路代
ライター。1972年生まれ。大学卒業後、地方テレビ局のOLを経て上京。派遣、編集プロダクション、ラジオディレクターを経てフリーランスライターに。アジアのエンターテイメントと女子、人気について主に執筆。共著に「女子会2.0」がある。また、TBS RADIO 文化系トークラジオ Lifeにも出演している。

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

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