毎田暖乃の再登場が『おちょやん』にもたらしたもの 千代と春子を演じ分けた繊細な演技力

毎田暖乃、大人顔負けの演技力

  そして、千代は9歳で奉公に出されてから30年以上の年月が過ぎ、栗子がテルヲと別れた後に一人で娘を産み、さくらと名付け必死で生きてきたことを知る。娘のさくらを大切に思えば思うほど、栗子は千代のことを思い出していたという。千代の人生があったように、その言動が意地悪でひどい継母に映った栗子のその後にも娘を守ってきた人生が続いていた。

 千代が役者になったことを知ったとき「うれしゅうて涙が止まらんかった」という栗子。千代の芝居に元気をもらっていたという栗子は名乗らずに花籠を贈り続け、千代は花籠を受け取ることで勇気づけられていた。お互いに励まし合う存在になっていたのだ。花車当郎(塚地武雅)がラジオドラマ出演の依頼に家に来たときも春子は素直にすごいなぁと驚き、「千代おばちゃんはもうお芝居やれねんの?」「見たかったなぁ、千代おばちゃんのお芝居」と芝居をやってほしいことを伝えたが、栗子は千代の芝居については何も触れることがなかった。

 花籠を贈り続けていた栗子と子供らしく千代への気持ちをぶつける春子。今まで芝居によって救われてきた千代が芝居を続けられなくなった状況で、出会うべくして出会った大切な存在である。

 千代と栗子、2人の間に春子がいる暮らしが「金輪際芝居はしない」と心を閉ざした千代を再び解放していく。終戦から6年、一平との別れから1年。栗子と春子の応援があって、ラジオドラマという新しい仕事に挑戦することになり、完全復活を遂げた千代。少女時代の千代の決意や思いに衝撃を受けたように、新しく始まる千代の物語に強く心を揺さぶられている。

■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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