村上弘明が40年越しに語る『仮面ライダー(新)』 オーディション抜擢と撮影秘話まで

村上弘明が語る『仮面ライダー(新)』秘話

変身ポーズは割とやっている?

――演技経験もない若い大学生が、プロの中に突然入って、かなり苦労されたと思いますが、撮影現場の印象などを聞かせていただけますか。

村上:現場でまず感じたのは、カメラマンを始めスタッフの方々がみんな白髪の人だったということ。今の年齢では多分、40~50代だったのかも知れないけど、当時の僕が20代の初め頃だったので、周りがおじいちゃんに見えたんです。子ども番組って、もっと若い人たちが作っているものだと思っていました。撮影は台本の流れ通りに撮るわけじゃなくて、段取りごとに後半を先に撮ったりと順番が違うんです。まだそういうのも分からない頃でしたから、今はどこを撮っているんだろう?と思いつつ、でも周りが怖いおじいちゃんばかりだから聞くに聞けず、言われた通りにやっていました。怒られたり怒鳴られたりもしましたし、早く終わらないかなぁなんて考えて、撮影所に行くのが怖かったですね。変身後の仮面ライダーは、スタントの人がやっているので、僕は必要ないと思い帰ろうとしたところ「アフレコもあるし、現場にいて動きを見てほしい」と言われ、仮面ライダー変身後も撮影に同行しました。都内からロケバスに乗って1時間ぐらいかけた地方に行くのですが、自分が出ていないシーンの撮影を見ているうちに、ドラマ作りの現場の雰囲気というものが身体に浸透していった気はしますね。大野剣友会の皆さんと仲良くなってゆく中で、剣友会の中屋敷哲也さんや岡田勝さんのお宅に泊まりに行ったり、ライダーが手をこうした時に台詞を言うよとか、そういう台詞のきっかけのコツを教えて頂きました。

――仮面ライダーに出演されている時期に、人気ぶりや反響を肌で感じたことはありましたか?

村上:当時僕は新小岩に住んでいて、大泉にある東映撮影所には電車で通っていましたが、JR線と西武池袋線の連絡駅で電車を待っていた帰りに、中学生か高校生ぐらいに見える7~8人の女の子のグループがワーッと駆け寄って来たんです。「村上さんですよね!?」、「握手してください」、「仮面ライダー観ています!」って。連日山奥に行って撮影して、スタッフ以外の人とは誰も会わない僕にとっては、割と衝撃的な体験でした。テレビで放送されているから周りから認知されているのかな? と思うと同時に、しっかり仕事をしなきゃいけないなという考えが、より固まったと思います。

――『仮面ライダー(新)』は、原点回帰を目指した初期の作風が地味だったということから、半年後に路線変更でヒーローの外見的な色合いも含め、随分明るくなります。村上さんはシリーズ前半と後半とで、どちらがお好きでしたか?

村上:うーん……どっちがというより、最初の頃は自分に余裕がなかったんですよ。それをやって行くうちに色々な仕組みが分かってきて、自分なりの創意工夫が出来るようになってきた。そういう体験の中での路線変更だったと思うので、印象に残っているのは自分にやりがいがあった後半の方です。僕自身、コミカルなものも嫌いじゃないので、楽しくやらせてもらったという印象はあります。共演者の中で一番思い出に残っているのは谷源次郎役の塚本信夫さんですね。初期に出演していた志度会長役の田畑孝さんは1クールぐらいで降板されてしまって、ハングライダークラブの女の子たちも同じ頃にいなくなって……。田畑さんと入れ替わりにレギュラー入りされた塚本さんは、僕が独り暮らしをしているのを知って「洗濯物とか大変でしょ。うちのカミさんが洗ってくれるから、持っていらっしゃい」と、とても気遣ってくれました。僕もまさか本当に洗濯物を頼んだりはしませんでしたが(笑)、塚本さんのそういう優しいお気持ちには感謝しながら、ありがとうございますって言っていました。

――放送期間中に映画『仮面ライダー 8人ライダー対銀河王』(1980年)が公開されましたが、映画を撮った時のことは覚えていますか?

村上:覚えています。映画の監督は、平山公夫さんという若手の監督さんでした。テレビシリーズは始まった頃から、山田稔さんを始め年配の監督さんばかりだったのですが、その中でも年齢が若めの平山監督は僕にとって兄貴分というか、僕の感覚や意見を受け止めてくれる人でした。僕の意見もよく採用してくれたので、自分の中でもこうしよう、ああしようと創意工夫の気持ちが生まれてくる。だから映画は割とのびのびとできた感じはしますね。カメラマンの助手が松村文雄さんという、ちょっと厳しい人だったのですが、後にチーフカメラマンで一本立ちした時には「芝居はともかく、走りは迫力がある」と言ってくださったんです。走りは絵になるという松村さんの言葉は、今でも胸に残っています。自信に繋がって、役者の武器がひとつ出来たなと思いました。

――映画は冒頭15分ぐらいまで筑波洋として出ていますが、変身するとラストまでずっとスカイライダーの姿のまま終わります。素顔の出番が少なめなのは、並行していたテレビシリーズのスケジュールの都合だったんですか?

村上:いや、違いますね。ひとえに僕の演技力の未熟さ故だったんだと思います。初期の段階で僕が素人で芝居ができないということが、筑波洋の出番が少なくなったんだと思います。僕の方から進言すれば良かったのかも知れないけど、当時の僕はそういうことを言える立場ではなかったですし。せっかく平山監督と話し合いながら、現場が楽しくなってきた頃だったので、もっと素顔で出たいなぁという思いはありました。

――映画といえば、平成以降の仮面ライダー映画には、昭和のライダー俳優がゲスト出演されることが時々あるのですが、村上さんの所にライダー映画のゲスト出演のお話があったらいかがですか? スカイライダーの声の出演のみ、でも。

村上:面白い役、やってみたいなと思いますね。映画『極道の妻たちII』(1986年)の時も、ヤクザの役なんだけどどうする? とマネージャーに渡された台本を読んでみたら、とてもおもしろい役だったのでお引き受けしたのですが、それと同じで僕は本を読んだ第一印象を大事にしています。台本を読ませていただいて、面白いなと思ったらOKです。

――村上さんは故郷の岩手県の魅力を発信するPR動画にも多く出演されて、その中で筑波洋の変身ポーズを再演されている回があったので、あれは割と驚きました。

村上:ああ、やりましたね! 遠野市の紹介の時でしたっけ?(2017年)。その番組のディレクターが、(スカイライダーを)放送当時に観ていましたということもあって、あのPR映像の撮影の時は現場に怪人がいたので(岩手のローカルヒーロー『鉄神ガンライザー』のキャラクター)、怪人を相手に変身したんですけど、周りのスタッフも喜んでいました。僕も喜んでもらえるなら良いなと思っています。映画の『ジュリエット・ゲーム』(1989年)でも、「変身! とうっ」と、やっていますしね。NHKの時代劇『腕におぼえあり』(1992年)の打ち上げでも、スタッフから「村上さん、仮面ライダー観てました。でも、変身ポーズ……無理ですよね?」と言われてやったので、その場のスタッフや共演者は見ているんですが、電波には乗っていない。単に公共の電波に乗っていないだけで、変身ポーズは割とやっているんですよ。周りが僕に変身ポーズをやってほしいんだけど、それはちょっと言いづらい、という空気を感じた時にはやっています。僕自身は仮面ライダーの芸歴に関して嫌だとか、そういうのは全然ないのですが。やっぱり俳優の入り口になった作品ですからね。

■放送情報
『仮面ライダー(新)』
東映チャンネルにて、5月18日(火)スタート 毎週火曜19:00~放送
※毎週土曜8:00~再放送
出演:村上弘明、田畑孝、塚本信夫、東隆明、桂都丸、田中功子、江口燁子、堀田真三
監督:山田稔ほか
脚本:伊上勝ほか
製作年1979/30 HD/CC

『仮面ライダー 8人ライダーVS銀河王 4Kリマスター版』
東映チャンネルにて、5月放送
出演:村上弘明、船倉たまき、二瓶秀雄、中村ブン、中庸助、石ノ森章太郎
監督:石ノ森章太郎、平山公夫
脚本:高久進
製作年1980/45 HD/CC

仮面ライダー生誕50周年「4Kリマスターで甦る!昭和ライダー THE MOVIE Vol.3」
昭和仮面ライダーのTVシリーズ全作の1話&最終話を一挙放送!
東映チャンネルにて、6月放送

『仮面ライダー』第1話・第98話
『仮面ライダーV3』第1話・第52話
『仮面ライダーX』第1話・第35話
『仮面ライダーアマゾン』第1話・第24話
『仮面ライダーストロンガー』第1話・第39話
『仮面ライダー(新)』第1話・第54話
『仮面ライダースーパー1』第1話・第48話
『仮面ライダーBLACK』第1話・第51話
『仮面ライダーBLACK RX』第1話・第47話
『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』
『仮面ライダー世界に駆ける』

公式サイト:https://www.toeich.jp/
公式Twitter:https://twitter.com/toei_channel
※放送日時は変更になる場合あり

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「インタビュー」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる