『仮面ライダー』50周年企画は“挑戦の連続”の歴史を象徴? 対象年齢の変化を追う

『仮面ライダー』対象年齢の変化を追う

 仮面ライダー50周年記念で発表された3つの企画は、アニメ化、過去作のリブート(リメイク)、原点回帰の映画と、それぞれスタイルも対象も異なっている。アニメ『風都探偵』は原作漫画の読者、つまり『仮面ライダーW』の世界観やキャラクターを元から知っている人が好むだろうし、実写映画畑で活躍している白石和彌監督が撮る『仮面ライダーBLACK SUN』は、映画ファン向けの抜擢に思える。庵野監督の『シン・仮面ライダー』は、『シン・ゴジラ』、『シン・ウルトラマン』に続く、実写ヒーローの原点回帰プラス新たな切り口の劇場用作品で、過去の実績から見ても一般層を巻き込んでのヒットは疑いようがない。

 もとより仮面ライダーの歴史を振り返ると挑戦の連続だった。20周年記念として制作されたオリジナルビデオ作品『真・仮面ライダー 序章』(1992年)は、生態的なバッタ怪人型のヒーローで、変身ベルトや手持ちの武器といったマーチャンダイジング(玩具展開)を考慮しない大人向けの仮面ライダーだ。同様に大人向け路線として『仮面ライダー THE FIRST』(2005年)と、その続編『仮面ライダー THE NEXT』(2007年)がある。仮面ライダー1号、2号、V3のデザインを現代的にリファインし、スタイリッシュなアクションを見せつつも、『THE FIRST』では石ノ森章太郎の原作漫画の要素を、『THE NEXT』では『仮面ライダー』第1作初期に倣って怪奇性を取り入れている。また、Amazonプライム・ビデオの独占配信作品『仮面ライダーアマゾンズ』(2016~2017年)は、『仮面ライダーアマゾン』(1974年)のリブートという体裁だが、内容は大幅に一新し、大人も楽しめるハードなストーリーとバイオレンス描写が盛り込まれている。

 一方のテレビシリーズでは『仮面ライダー鎧武』(2013年)のメインライターに、『魔法少女まどか☆マギカ』(2011年)のヒットで広く名を知られた脚本家・虚淵玄を招き、アニメファンからの驚きと注目を集めた。虚淵は1年間に及ぶ放送の中、全47話中29話を単独で、14話を共同脚本として執筆し、作品のカラー統一に努めた。

 数年の休止期間を断続的に挟んでいるが、半世紀も新作が供給され続けている仮面ライダーは、今や子供向けジャンルという枠にとどまらず、親子2世代ヒーローとなった。劇場用、配信用、ビデオ作品、テレビシリーズと媒体ごとに、スタッフも柔軟な座組で制作にあたっている。50年という歳月の中で、対象年齢の裾野がこれだけ広がった特撮ヒーローも稀有ではなかろうか。50周年記念に発表された3タイトルの行方も見守って行きたい。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■書籍情報
『風都探偵』
掲載誌:『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)
原作:石ノ森章太郎
脚本:三条陸
マンガ:佐藤まさき
監修:塚田英明(東映)
クリーチャーデザイン:寺田克也
(c)石森プロ・東映 「週刊ビッグコミックスピリッツ」(小学館)
公式サイト:https://www.kamen-rider-official.com/kr50th/fuuto

■作品情報
『仮面ライダーBLACK SUN』
2022年春スタート
監督 :白石和彌
(c)石森プロ・ADK EM・東映
公式サイト :https://www.kamen-rider-official.com/kr50th/blacksun

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