中村倫也の表情の振れ幅に“身の毛がよだつ” 『珈琲いかがでしょう』が繋ぐ人々の思い

『珈琲いかがでしょう』中村倫也の振れ幅

心を通わす一つの言語になりうる、珈琲の時間

 「ファッション珈琲」では、元バリスタチャンピオンのモタエ(光浦靖子)が登場。「幻の珈琲豆」と名高いコピ・ルアックを、キッチンに2人並んでうっとりするシーンは、映画『かもめ食堂』や『メガネ』など、ゆったりと満ち足りた空気を描いてきた名手・荻上直子監督らしい画だ。

 そんな充実した時間もそこそこにワークショップの生徒たちがやってくる。驚いたのは、その中に第1話で青山の珈琲に惚れ込んだ垣根(夏帆)の姿があったこと。とっさに隠れた青山は、そのままモタエが「生徒の子たちとズレを感じて寂しい」というワークショップの様子を見守ることに……。

 モタエが伝えたいのは珈琲の本質的な魅力。しかし、生徒たちの興味は表面的な見栄えにしかない。最終的にコピ・ルアックだと偽って、いつもの珈琲を飲ませても、気づくことができない。何か自分に箔をつけたいだけで、それは珈琲じゃなくてもいいといった雰囲気に、モタエはガッカリしていたのだ。

 だが、片道3時間もかけてモタエのところに通っていた夏帆には、その味の違いがわかる。それは、青山の淹れてくれた珈琲に近づきたいという忘れられない味の思い出を追い求めてきたから。本当に美味しい珈琲というのは、淹れた人と飲んだ人の思いが通い合う瞬間を指しているのかもしれない。

 奇しくも、垣根は若き日の青山と同じ「美味しい珈琲を淹れたい、ただそれだけ」という言葉を発する。その「美味しい珈琲」とは、自分自身を含む、誰かと心を通わせたいと同義語なのではないだろうか。

 かつて、泣きながら青山を殴ったぺいも、本当は珈琲で青山とつながり続けたかったはずだ。拳という共通言語でわかり合えたと思っていた仲間が、その言葉を捨てて今度は珈琲で語るのだと住む世界を変えようとしているのだ。その寂しさ、そして自分はそれを共有できないという悔しさで、あれだけの涙が溢れたのだろう。

 そんな珈琲によって救われた垣根と、珈琲によって奪われたぺい、そして青山がついに一堂に会す。ふわふわな青山から、ギラギラな金髪青山まで、きっと次回はさらにいろいろな表情を見せてくれるに違いない。俳優・中村倫也の味の幅広さを存分に堪能する時間になりそうだ。

■放送情報
『珈琲いかがでしょう』
テレビ東京系にて、毎週月曜23:06~23:55放送
出演:中村倫也、夏帆、磯村勇斗、光石研ほか
第4話ゲスト:一ノ瀬ワタル、山田真歩、池谷美音、野間口徹、松本若菜、光浦靖子
第4話~:渡辺大
第6話~:宮世琉弥、鶴見辰吾
第7話~:長野蒼大
原作:コナリミサト『珈琲いかがでしょう』(マッグガーデン刊)
監督・脚本:荻上直子
監督:森義隆、小路紘史
音楽:HAKASE-SUN
オープニングテーマ:「エル・フエゴ(ザ・炎)」小沢健二(Virgin Music/UNIVERSAL MUSIC)
エンディングテーマ:「CHAIN」Nulbarich(ビクターエンタテインメント)
チーフプロデューサー:阿部真士(テレビ東京)
プロデューサー:合田知弘(テレビ東京)、森田昇(テレビ東京)、山田雅子(アスミック・エース)、平部隆明(ホリプロ)
制作:テレビ東京/アスミック・エース
制作協力:ホリプロ
製作著作:「珈琲いかがでしょう」製作委員会
(c)「珈琲いかがでしょう」製作委員会
公式サイト:https://www.tv-tokyo.co.jp/coffee_ikaga/
公式Twitter:@tx_coffee
公式Instagram:tx_coffee_ikaga

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる