『大豆田とわ子と三人の元夫』慎森は坂元裕二ドラマ定番? “面倒くさい男”の新たな可能性

『まめ夫』坂元裕二定番の“面倒くさい男像”

 残った慎森は、大豆田とわ子とソファーの話をしているうちに、おでこをくっつけて「なくした時間を取り戻したい」と言うが、「なくしたんじゃないじゃん。捨てたんじゃん」と反論される。

 悪態をつきながら、恨み言と愚痴を言う慎森は、『最高の離婚』(フジテレビ系)の濱崎光生(永山瑛太)や『カルテット』(TBS系)の家森諭高(高橋一生)を彷彿とさせる、坂元裕二がもっとも得意とする面倒くさい男だ。慎森の言い分は光生や家森と同様、とことん自分本位で甘えたものだ。今までの坂元裕二作品なら、そんな慎森に対して元妻からの激しい罵倒が展開されるのだが、過去作より優しく見えるのは、大豆田とわ子にとって慎森との関係はすでに終わった過去だからだ。これは、非難されるよりも辛いことだが、『まめ夫』はここで終わらず、新たな可能性を提示する。

 社長として頑張る彼女を「ずっと、眩しいよ」という慎森に「別れたけどさ、今でも一緒に生きてると思ってるよ」と大豆田とわ子は言う。

 その後、慎森は不当解雇にあった小谷翼を弁護士として助けようとする。大豆田とわ子の言葉は慎森にとって救いとなり、彼の中に眠っていた正義感を目覚めさせたのだ。「今でも一緒に生きてる」どんな愛の言葉よりも尊い、救いに満ちた言葉である。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

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