『大豆田とわ子と三人の元夫』は全く先が読めない? 印象に残る伊藤沙莉のナレーションも

『大豆田とわ子と三人の元夫』先が読めない?

 また、タイトルを観た時に感じた印象と真逆の物語だったことには驚いた。

 『カルテット』の印象から、三人の元夫を従えるミステリアスな女性の話かと思っていたが、実際は逆で、むしろ大豆田とわ子の方が、謎めいた元夫たちに翻弄されているようにみえる。

 特に松田龍平が演じる最初の夫・田中八作は何を考えているかわからない。『カルテット』の別府司の時はむしろ翻弄される側だったが、久しぶりにミステリアスな松田龍平を観たような気がした。

 逆に『カルテット』で好評だった思わせぶりな台詞や不思議なやりとりは健在で、その雰囲気に酔っているだけで最後まで楽しめる。

 ドラマ自体は、大豆田とわ子と元夫たちとの関係をじっくり見せたいという印象で、逆にどういう物語なのかと言われると言葉に詰まってしまう。しかしそれは欠点ではなく、本作最大の魅力で『カルテット』もそういうドラマだった。

 大抵のドラマは第1話を観れば物語の方向性や内容が概ねわかるものだが『大豆田とわ子と三人の元夫』は、先が全く読めない。だからこそ、ああでもないこうでもないと想像してしまうのだが、そうやって本作のことを考えている時間はとても優雅で贅沢なものだ。

 『カルテット』で堪能した贅沢な時間が再び味わえるかと思うと、今後が楽しみである。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
『大豆田とわ子と三人の元夫』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週火曜21:00〜放送
出演:松たか子、岡田将生、角田晃広(東京03)、松田龍平、市川実日子、高橋メアリージュン、弓削智久、平埜生成、穂志もえか、楽駆、豊嶋花、石橋静河、石橋菜津美、瀧内公美、近藤芳正、岩松了ほか
脚本:坂元裕二
演出:中江和仁、池田千尋、瀧悠輔
プロデュース:佐野亜裕美
音楽:坂東祐大
制作協力:カズモ
制作著作:カンテレ
(c)カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/mameo/
公式Twitter:@omamedatowako

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる