『イチケイのカラス』が提示する法廷劇の新たなパターン 思い出すのは『HERO』?

『イチケイのカラス』が描く新たな法廷劇の形

 ところで入間は坂間に対し、こんな問いを投げかける。「『浦島太郎』の乙姫の罪状は何か?」。それに対して坂間は「詐欺罪」と「危険物を持たせて甚大な苦痛を与え、死んでいたかもしれないから殺人未遂も視野に」とまくしたてる。後者はさておき、前者は財物を交付させるという構成要件に該当しないから成立させるのは難しいだろう。いずれにせよ、劇中後半で語られる通り「御伽草子」の中には後日談として、玉手箱を開けた浦島太郎が鶴となって千年の命を得て、亀になった乙姫と結ばれるくだりがあるという。

 原作では男性キャラクターであった坂間が女性に脚色され、この『浦島太郎』を想起させる“千鶴”という名前が与えられたことから考えるに、この“イチケイ”は竜宮城か玉手箱といったところだろうか。さながら入間は乙姫といったところか。今後最高裁でキャリアを積むことが期待されている坂間が、“イチケイ”での経験を通して堅物で機械的な視点を取り払って新しい世界を開いていく。それがこのドラマのひとつの要となるのかもしれない。

■久保田和馬
1989年生まれ。映画ライター/評論・研究。好きな映画監督はアラン・レネ、ロベール・ブレッソンなど。Twitter

■放送情報
『イチケイのカラス』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
※第2話15分拡大(21:00〜22:09)
出演:竹野内豊、黒木華、新田真剣佑、山崎育三郎、桜井ユキ、水谷果穂、中村梅雀、升 毅、草刈民代、小日向文世
原作:浅見理都『イチケイのカラス』(講談社モーニングKC刊)
脚本:浜田秀哉
音楽:服部隆之
裁判所監修:水野智幸(法政大学法科大学院)
プロデュース:後藤博幸、有賀聡、橋爪駿輝
編成企画:高田雄貴
演出:田中亮、星野和成、森脇智延、並木道子
制作協力:ケイファクトリー
制作・著作:フジテレビ第一制作室
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/ichikei/
公式Twitter:@ichikei_cx
公式Instagram:@ichikei_mimamoru

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