『進撃の巨人』『鬼滅の刃』『約束のネバーランド』 アニメの残虐描写、なぜ“食べる"に?

 しかし、最終的にオカルティックな最終戦争(ハルマゲドン)へと向かった『デビルマン』に対し、人間を食べる怪物との戦いに特化した『寄生獣』の方が、今となっては射程が広く、前述した『進撃の巨人』等の作品も『デビルマン』よりも『寄生獣』のテーマを継承した作品だと感じる。

 これは『デビルマン』のベースにあった旧約聖書的な終末論が21世紀に入って陳腐化し、より本質的な対立軸として「食うか食われるか」という異種族間の戦いに注目が集まるようになっていったからだろう。

 一方、先日、シーズン2が終了したアニメ『BEASTARS』は『進撃の巨人』等で描かれた「食われる」恐怖を、真逆の立場、つまり「食べる側」から描いた傑作だった。

 板垣巴留が『週刊少年チャンピオン』(秋田書店)で連載していた本作は、近年ではディズニーのアニメ映画『ズートピア』が描いていたような、肉食動物と草食動物が共存する世界を舞台にした作品だ。全寮制のチュリートン学園に通う、ハイイロオオカミのレゴシは、ドワーフウサギのハルに捕食の欲望を抱くのだが、その欲望はやがて、恋愛感情とも庇護欲とも言えないものへと変わっていく。

 レゴシの肉食への欲望は性欲のようでもあるし、カニバリズムへの欲望にも見える。同時に、肉食動物が禁じられた肉食を求めて裏市を徘徊する姿をみていると、ドラッグ中毒の比喩にも見えてくる。肉食動物による食殺に様々な欲望を重ね、肉食への欲望(本能)が他者を傷つけてしまう加害性と向き合うとする姿を描いたことによって、極めて現代的な青春アニメとなっていた。

 これは『呪術廻戦』、『チェンソーマン』、『アンデッドアンラック』といった近年のジャンプ漫画でも描かれているテーマだ。人類の根源的な恐怖として描かれた捕食の不安だが、今後は、捕食の欲望(巨大な力を持つことの加害性)とどう折り合いをつけるかということが、今後の漫画やアニメにおける重要なモチーフとなっていくのではないかと思う。

【特報】TVアニメ「進撃の巨人」The Final Season 第76話「断罪」NHK総合にて今冬放送!

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
TVアニメ『進撃の巨人』The Final Season 第76話「断罪」
NHK総合にて今冬放送予定
※放送日時は変更になる場合あり
原作:諫山創(別冊少年マガジン連載/講談社)
監督:林祐一郎
シリーズ構成:瀬古浩司
キャラクターデザイン:岸友洋
総作画監督:新沼大祐
演出チーフ:宍戸淳
エフェクト作画監督:酒井智史、古俣太一
色彩設計:末永絢子
美術監督:小倉一男
画面設計:淡輪雄介
3DCG監督:上薗隆浩
撮影監督:浅川茂輝
編集:吉武将人
音響監督:三間雅文
音楽:澤野弘之/KOHTA YAMAMOTO
音響効果:山谷尚人(サウンドボックス)
音響制作:テクノサウンド
アニメーションプロデューサー:松永理人
制作:MAPPA

<キャスト>
エレン・イェーガー:梶裕貴
ミカサ・アッカーマン:石川由依
アルミン・アルレルト:井上麻里奈
コニー・スプリンガー:下野 紘
サシャ・ブラウス:小林ゆう 
ヒストリア・レイス:三上枝織
ジャン・キルシュタイン:谷山紀章
ライナー・ブラウン:細谷佳正
ハンジ・ゾエ:朴 璐美
リヴァイ:神谷浩史
ジーク:子安武人
ファルコ・グライス:花江夏樹
ガビ・ブラウン:佐倉綾音
ピーク:沼倉愛美
ポルコ・ガリアード:増田俊樹
ウド:村瀬歩
ゾフィア:川島悠美
コルト・グライス:松風雅也

(c)諫山創・講談社/「進撃の巨人」The Final Season製作委員会
公式サイト:https://shingeki.tv/final/
公式Twitter:@anime_shingeki

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「アニメシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる