三石琴乃が表現した“大人の女性”の葛城ミサトと月野うさぎ ドラマ『リコカツ』にも出演

 戦闘指揮官として現場で的確な指示を出すキャリアウーマンだが、私生活はだらしがなくシンジが暮らすことになる家は散らかり、ミサトはお酒を呑んで豪快な姿で眠りにつく。一見するとオンとオフの切り替えができている、憧れのお姉さん的存在だ。けれども余裕のある振る舞いを見せながらも、物語が進むにつれ時に攻撃的な一面をあらわにし、新劇場版では彼女の本質を知る元恋人の加持リョウジがシンジに「あいつを守ってくれ」とミサトのことを託した。

 特にシンジと築いてきた母と子、姉と弟、上司と部下といった複雑な関係性は、ミサトの大人になりきれない未熟さを表している。だからこそ、旧劇場版『新世紀エヴァンゲリオン劇場版 DEATH(TRUE)2/Air/まごころを、君に』でゼーレが派遣した戦略自衛隊の攻撃からシンジを守り、絶命する直前にミサトは「結局シンジくんの母親にはなれなかった」という後悔の言葉を呟いたのだろう。

 そんなミサトが『シン・エヴァンゲリオン劇場版』でシンジと共に大きな変化を見せる。ストーリーへの言及は避けるが、今回三石が演じたのはこれまでのミサトとは違う、大人としての責任感と母親としての愛情を持った人間だ。

 エヴァのコミカライズ第1巻のインタビューで庵野監督が「私はこの物語が終局を迎えた時、世界も、彼ら(シンジとミサト)も、変わって欲しい、という願いを込めて、この作品を始めました」と語ったように、本作はシンジ、そして同時にミサトの成長物語でもあった。本作では、それほど重要なキャラクターであるミサトがたしかに成長したと思わせる変化を、三石がこれまでに以上に力強い声と説得力のある演技で見せている。まだ映画を観ていない人も、すでに観終わった人も今一度シンジだけではなくミサトの成長ぶりをその目に焼き付けてほしい。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■公開情報
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
全国公開中
企画・原作・脚本・総監督:庵野秀明
監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
テーマソング:「One Last Kiss」宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
声の出演:緒方恵美、林原めぐみ、宮村優子、坂本真綾、三石琴乃、山口由里子、石田彰、立木文彦、清川元夢、関智一、岩永哲哉、岩男潤子、長沢美樹、子安武人、優希比呂、大塚明夫、沢城みゆき、大原さやか、伊瀬茉莉也、勝杏里、山寺宏一、内山昂輝、神木隆之介
音楽:鷺巣詩郎
制作:スタジオカラー
配給:東宝、東映、カラー
上映時間:2時間35分
(c)カラー
公式サイト:http://www.evangelion.co.jp
公式Twitter:https://twitter.com/evangelion_co

■放送情報
金曜ドラマ『リコカツ』
TBS系にて、4月16日(金)スタート 毎週金曜22:00~22:54放送
出演:北川景子、永山瑛太、高橋光臣、白洲迅、大野いと、田辺桃子、中田クルミ、平岩紙、宮崎美子、酒向芳、三石琴乃、佐野史郎ほか
脚本:泉澤陽子
演出:坪井敏雄ほか
プロデュース:植田博樹、吉藤芽衣
製作著作:TBS
(c)TBS

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