『シン・エヴァ』、緊急事態宣言下ながら興収100億円超え確実のロケットスタート

 2007年に公開された『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』から14年(最初のテレビシリーズから数えると約25年)、4作目となる今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』で遂に完結に到った『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』だが、そもそもこのシリーズは2作目以降は配給体制が毎回異なるという、興行面においても異例づくしのシリーズだった。『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序』(最終興収20億円)と、そこから興収が倍増した『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』(最終興収40億円)の配給は独立系配給会社のクロックワークスとカラー。前作『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:Q』(最終興収53億円)の配給は東映系のシネコン運営会社ティ・ジョイとカラー。当時は当コラムを始める前だったので過去記事は存在しないが、自分は『破』から『Q』の流れでも興収倍増があり得ると思っていた。実際に『Q』が公開されて初日にスクリーンで作品を観るまでは(『Q』を観たことがある方はご存知の通り、同作は『序』から『破』の流れを断ち切ってしまうような、かなりの問題作だった)。

 1都3県の緊急事態宣言下という向かい風は吹いているものの、東宝、東映、カラーの共同配給という磐石な配給体制で世に送り出された今回の『シン・エヴァンゲリオン劇場版』。内容についてはスポイラーに敏感になられてる方も多いと思うので公開から間もないこの段階ではこれ以上書かないが、初日にスクリーンで作品を観た上で断言すると、本来想定されていた「前作の倍増ペース」の軌道に完全に戻るだけのポテンシャルは十分。『Q』の53億円の倍の106億円ではない。『破』の倍の倍、最終興収は160億円あたりになると予想する。今後、当コラムでも長い付き合いの作品になりそうなので、その根拠は次回以降に。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『シン・エヴァンゲリオン劇場版』
全国公開中
企画・原作・脚本・総監督:庵野秀明
監督:鶴巻和哉、中山勝一、前田真宏
テーマソング:「One Last Kiss」宇多田ヒカル(ソニー・ミュージックレーベルズ)
音楽:鷺巣詩郎
制作:スタジオカラー
配給:東宝、東映、カラー
上映時間:2時間35分
(c)カラー
公式サイト:http://www.evangelion.co.jp
公式Twitter:https://twitter.com/evangelion_co

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