『天国と地獄 』東朔也の犯行動機を徹底考察 入れ替わりは再現可能?

『天国と地獄 』東朔也の犯行動機を徹底考察

東朔也は二重人格!?

 ここからは、筆者の勝手な予想としてお読みいただきたい。真面目で、面倒な父親のことを見捨てることができなかった東が、いくら自分と重なる主人公の漫画を読んだからといって、いきなり殺人鬼“クウシュウゴウ”となりうるのは考えにくい。もっと強烈な、何かきっかけがあったのではと思わずにはいられない。

 そのヒントになりそうなのが、かつて陸が日高と入れ替わったことを知らず、彩子の急激な変化に相談したときのこと。東は「ストレスが引き金になって二重人格になったのではないか」と答えていた。もしかしたら膵臓がんで余命宣告を受けるという大きなストレスがトリガーとなり、呪われた運命の原因となった四方や久米を殺害しろと、ミスターX的な人格が生まれてしまったのではないだろうか。

 自分が太陽(陽斗)になるはずだった。しかし、誰からもいない扱いされる月(朔也)になってしまった。日高が、カーキの革手袋は亡き母からのプレゼントだと話していたことを考えると、母親・茜はすでにこの世にいない。人生を散々振り回した父親・貞雄も亡くなった。であれば、日高を一連の殺人事件に巻き込もうとしたもう一つの人格は、ずっと家族に向けることのできなかった東の甘えの化身だったのかもしれない。

 犯行予告である数字を残し、どこまでも追ってくれる日高の姿に、この世界に1人でも自分のことを気にかけてくれる人がいることを、確かめたかったのではないか。そう考えると、日高と八巻(溝端淳平)が、張り込む姿を見て、やけくそのような犯行に走ったのも納得がいく部分もある。

入れ替わりは、再現できたのか!?

 東は、陸の協力を得て病院を抜け出し、故郷の福岡、そしていよいよ多くの謎が残されている奄美大島へと向かう。奄美大島といえば、なぜ日高が現地で「東朔也」と名乗ったのかが、その理由もまだ明かされていない。ちなみに、東が警備員として働いていた場所が証券会社であったことも、元証券マンだったという陸とのつながりがあったのではないか、と気になるところだ。

 そして、どんなに偽装をしても、久米幸彦の殺人に東が関与していることは隠しきれなくなった日高。しかも、そこから乳歯も見つかり、さらに窮地に追い込まれる。そこで日高が持ち出したのは、あの四方を殺害したときに使用された奄美大島の丸い石だった。

 日高の実家にも丸石があったことを考えると、凶器となった石はおそらく東のものだろう。あの日、日高と彩子が入れ替わったあの満月の夜。きっと、日高は東と本気で入れ替わろうと待っていたに違いない。1人で向かった奄美大島で、月と太陽の伝説を聞き、兄の残り僅かな人生を引き受け、自分の残りの人生を捧げて、それまで何もしてあげられなかった兄を救おうと。

 そして、今回は日高として警察に追われる彩子を救おうと、再び入れ替わろうとしているように見える日高。あの日と同じように、石、手錠、そして満月の夜と、同じ条件で歩道橋から落ちた2人。起き上がった彩子の体には、果たしてどちらの魂が入っているのか。筆者としては、日高となったときに両手で顔を抑えた彩子と、その動きがシンクロしていたことから、彩子に戻ったのではないかと予想している。

 次回予告を見ても、髪の毛を束ねた懐かしいヘアスタイルが見えた。そして、「始めからこんなことすんじゃねぇ」と泣き叫ぶ姿も。この感情的で、どストレートな物言いは彩子ではないかと思うのだ。

 しかし、何があるかわからないのが森下脚本作品。もしかしたら、今から例の近所のおじいさん殺害容疑が日高に起こる可能性だってある。ボストン時代の事件についても、さらには十和田の自殺についても、日高が関与していないという確証は一つもない。私たちは、日高のいう「希望的観測」を見続けているのかもしれないという気構えはしつつ、最終章を楽しみたい。

■放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
TBS系にて、 毎週日曜21:00~21:54放送
出演:綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
製作著作:TBS
(c)TBS

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