加藤清史郎、『モコミ』で自身のキャリアとも重なる役を好演 工藤阿須加は“裏の顔”も

『モコミ』加藤清史郎、自身と重なる役を好演

 佑矢との掛け合いの中で、実は俊祐も学生時代に劇団に入っていたことが明かされる。周囲にそんなの無理だ、上手く行きっこないと言われても、通説に囚われず自分の信じた道をひた走ることを選んだ佑矢の言動が、さらにはそれを受けてどんどん佑矢の決断を肯定する様子の千華子(富田靖子)と伸寛(田辺誠一)の反応に、色んなことを口にさえ出さずに我慢して諦めてきた俊祐は自身のコンプレックスを刺激され、いたたまれなくなったようだ。

 ついに家族の前で声を荒げ「昔からいじめられる萌子美を心配する良いお兄ちゃん役。おじいちゃんの花屋を継いで家族想いな、地元のお年寄りからも好かれる花屋の店長役を演じてきた」のだと言う。自分は役者の夢も中途半端、花屋を継いだ理由も就活から逃げるためだったと明かし、そんな“ダサい”花屋さえも今や萌子美の世界観に塗り替えられ、妥協して甘んじていた唯一の自分の居場所さえ奪われたのだと訴える。

 今や両親に「お母さんたちの意見より自分の感覚、信じるから」と言える萌子美に対して、自分はせいぜい「いい人」という匿名アカウントで自身のひん曲がった本音かどうかさえわからない悪態をつくのが精一杯な俊祐。しかもフォロー数、フォロワー数ともにゼロの、誰も見ていない、誰にも届かないほぼほぼ人目がなく安全が保証されている小さな小さな自分だけの世界で家族や周囲に対する不平不満をただただ垂れ流すだけだ。

 か弱く手のかかる妹、古めいた花屋などの「守るべきもの」があって初めて自身の存在意義や役割をかろうじて確認できていた俊祐にとっては、それらが突然自分から手離れしてしまったかのような感覚に襲われ、自分自身が必要とされていない、不要な存在だと突きつけられているような気になってしまったのだろう。

 どうやら自分の本音が言えずにずっと殻に篭っていたのは少し前の萌子美だけではなかったようだ。周囲に平気な顔して笑顔を振りまきながらも全然“大丈夫じゃなかった”俊祐がどうやって自分の本心に向き合い、自分自身を取り戻していくのか、次週見守っていきたい。

■佳香(かこ)
元出版社勤務。現在都内OL時々ライター業。三度の飯より映画・ドラマが好きで劇場鑑賞映画本数は年間約100本。Twitter

■放送情報
『モコミ~彼女ちょっとヘンだけど~』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:小芝風花、加藤清史郎、工藤阿須加、田辺誠一、富田靖子、橋爪功、水沢エレナ、内藤理沙ほか
脚本:橋部敦子
演出:竹園元(テレビ朝日)、常廣丈太(テレビ朝日)、鎌田敏明
音楽プロデュース:S.E.N.S. Company
音楽:森英治
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:竹園元、中込卓也(テレビ朝日)、布施等(MMJ)
制作著作:テレビ朝日
制作協力:メディアミックス・ジャパン(MMJ)
企画協力:オスカープロモーション
(c)テレビ朝日

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