藤原竜也&竹内涼真の姿がアツく語ること 『太陽は動かない』の“シンプルな主題”

『太陽は動かない』藤原竜也のアツい姿

 さて、この映画がなぜ10カ月も遅れて公開されたのかといえば、その理由は明白。新型コロナウイルスの感染拡大の影響である。しかしながら、当初の公開予定の時期と現在とで、世界の状況が好転したとは言い難い。私たちを取り巻く諸々の問題は、世界レベルのみならず、それぞれが生活する地域レベルでも日を追うごとに増えている。先が見えづらい日々ーーときには心が折れてしまいそうになることもあるだろう。そんな私たちに、型破りな男・鷹野は「1日を生きていくだけだ」と語る。


 もちろんこれは、胸に爆弾を抱える彼らだからこそ重みのある言葉だ。しかしこの言葉は、1年先のことはおろか、1カ月先、1週間先、それどころか、明日のことさえ分からない私たちにも響くものがあると思う。派手な作品だが、“今日のこの一日を懸命に生きることの大切さ”という主題は、いたってシンプルだ。いまを生きる、誰しもに当てはまる主題だろう。これをスクリーン越しに訴えてくる、鷹野&田岡コンビのアツさの勝ちである。

 こんな“アツさ”といえば、昨年の秋に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の大人気キャラクター・煉獄杏寿郎の「心を燃やせ!」という言葉が思い出される。彼の言葉は私たち観客の多くの心に炎を灯し、それはいまなお絶えていないのではないだろうか。どうにも暗くなりがちな昨今、“アツさ”を感じることは非常に有意義なことだと思う。

 劇場にて、この熱量を体感してほしい!

■折田侑駿
1990年生まれ。文筆家。主な守備範囲は、映画、演劇、俳優、服飾、酒場など。最も好きな監督は増村保造。Twitter

■公開情報
『太陽は動かない』
全国公開中
出演:藤原竜也、竹内涼真、ハン・ヒョジュ、ピョン・ヨハン、市原隼人、南沙良、日向亘、加藤清史郎、横田栄司、翁華栄、八木アリサ、勝野洋、宮崎美子、鶴見辰吾、佐藤浩市ほか
原作:吉田修一『太陽は動かない』『森は知っている』(幻冬舎文庫)
監督:羽住英一郎
脚本:林民夫
制作会社:ROBOT
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)吉田修一/幻冬舎 (c)2020「太陽は動かない」製作委員会
映画公式サイト:taiyomovie.jp
公式Twitter:@taiyowaugokanai

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる