野村萬斎は日本の“ポアロ”を象徴 三谷幸喜版『死との約束』は“極上”のミステリー×喜劇に

『死との約束』は“極上”のミステリー×喜劇

日本のエルキュール・ポアロを象徴する野村萬斎

 クリスティー作品を原作とするならば、エルキュール・ポアロをどう取り入れるかも重要なポイントとなってくる。萬斎の芝居では、ポアロのように同じ大きさの2つの卵に固執するシーンや、口髭をひねる姿、チャップリンのようにちょこちょことした動きが非常に印象的。シリーズ第3弾となる今回は、萬斎自身が「さすがに3回目になりましたので、勝呂のスタイルもある意味確立されてきて、すっと入りやすくなりました」と公式サイトで語っているだけあって、その独特の口調や表情もすっかり板に付いている。

 歴代のポアロ俳優と呼ばれるデヴィッド・スーシェやケネス・ブラナーのように、萬斎自身が、日本での“ポアロ”を象徴する存在になって欲しいとの期待も高まる。気が早い話題かもしれないが、萬斎はインタビューで「イギリス映画でポアロを演じているケネス・ブラナーに対抗していきたいですね(笑)。すでに三谷さんは次の作品を構想しているというのが、実は我々の耳には入ってきています」と、こちらも公式サイト(同上)にて語っているので、このタッグがさらに続いていくことにも淡い期待を寄せて良さそうだ。

 特筆すべきは役者だけではない。もちろんミステリーとしての面白さは言うまでもなく、最後まで頭を悩ませるような難事件がラストでは勝呂の手により、するすると紐解かれていく様子がかなり心地良い。ポアロお決まりの“関係者を集めた種明かし”シーンに揃う豪華俳優陣の姿も圧倒される華やかさがあり、後半にかけて勢いを増す展開にどんどん引き込まれていくだろう。とある事件を通して家族の在り方から旅の風情、そして往年の名作ミステリーの世界観までを丁寧に描いた『死との約束』を、ぜひとも堪能してほしい。

■Nana Numoto
日本大学芸術学部映画学科卒。映画・ファッション系ライター。映像の美術等も手がける。批評同人誌『ヱクリヲ』などに寄稿。Twitter

■放送情報
スペシャルドラマ土曜プレミアム『死との約束』
フジテレビ系にて、3月6日(土)21:00〜放送
出演:野村萬斎、松坂慶子、山本耕史、シルビア・グラブ、市原隼人、堀田真由、原菜乃華、比嘉愛未、坪倉由幸(我が家)、長野里美、阿南健治、鈴木京香 ほか
原作:アガサ・クリスティー『死との約束』
脚本:三谷幸喜
プロデューサー:渡辺恒也、高丸雅隆(共同テレビ)
演出:城宝秀則(共同テレビ)
制作協力:共同テレビ
制作著作:フジテレビ
(c)フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp//yakusoku/

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