『きみセカ』キム・ジェヒョン演じるミンジュンの最期 響と等々力の関係はどう展開する?

『きみセカ』響の相棒・ミンジュンの最期

 救いがあるとすれば、ミンジュンが、憎まれるのではなく惜しまれながら死んでいったことだ。ミンジュンが琴子を殺したことを懺悔し、それを聞いた響がゴーレム化したミンジュンに刃を突き立てる場面は、形だけ取れば、響が母親のかたきを討っているようにも見える。悲劇であることに変わりはないが、響にはミンジュンを憎む気持ちはなく、苦渋の決断で親友にとどめを刺した。琴子に関しても、もしミンジュンが仕留めなければ、後々まで響を苦しめていたかもしれない。響はミンジュンを、ゴーレムでも母の命を奪った相手でもなく、人間として葬ろうとした。涙をためながらもミンジュンから目を背けなかったのは、責任感の強さだけではなく、何度も自分たちを守ってくれた友への感謝の思いもあったはずだ。

 響や佳奈恵、甲本(マキタスポーツ)、紹子(安藤玉恵)と結月(横溝菜帆)に支えられながら「なんだか家族みたいだ」とつぶやいたとき、ミンジュンは何を願っていたのだろう。子どもの頃、1人で眠るのが怖かったミンジュンは「ゴーレムの世界になった地獄だけど、1人で眠らずにいられて良かった」と最期を看取った仲間たちに感謝する。終末世界で人間らしさを失わなかったミンジュン。その思いはむなしく、憎しみの連鎖は続く。響はミンジュンを刺した女に、それが来美であるとは知らずに復讐を誓い、妹を殺された勝利の憎しみは来美にも伝染する。疑似家族のような響たちは、家族の憎しみも背負うことになった。

 ふたたび響の前に現れた等々力(笠松将)は、銃口を向けて「小笠原(来美)のことはもう探さないのか?」と訊ねる。かつての友は大事なことを思い起こさせる存在で、響とのライバル関係がSeason1終盤でどのように展開していくか注目したい。余談だが、琴子役・臼田あさ美は、これまでに登場したゴーレム中でナンバー1の迫真の演技だった。特殊メイクもさることながら、虚ろな表情で視線をさまよわせ、うめき声を上げて襲ってくる挙動から、人間性を喪失した得体の知れない恐怖が伝わってきた。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『君と世界が終わる日に』
Season1(全10話):日本テレビ系にて毎週日曜22:30〜放送
Season2(全6話):Huluにて、3月配信開始
出演:竹内涼真、中条あやみ、笠松将、飯豊まりえ、大谷亮平、笹野高史、マキタスポーツ、安藤玉恵、横溝菜帆、鈴之助、キム・ジェヒョン、滝藤賢一
脚本:池田奈津子
音楽:Slavomir Kowalewski A-bee
主題歌:菅田将暉「星を仰ぐ」(Sony Music Labels Inc.)
制作:福士睦、長澤一史
チーフプロデューサー:加藤正俊、茶ノ前香
プロデューサー:鈴木亜希乃、鬼頭直孝、伊藤裕史
協力プロデューサー:白石香織
演出:菅原伸太郎、中茎強、久保田充
制作協力:日テレアックスオン
製作著作:日本テレビ、HJ Holdings,Inc.
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/kimiseka/
公式Twitter:@kimiseka_ntv
公式Instagram:@kimiseka_ntv

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