『アイカツプラネット!』なぜ実写とアニメの融合に? シリーズの歴史から考察

“コアファン向け”へと舵を切った『アイカツオンパレード!』

 『アイカツ!』、『アイカツスターズ!』、『アイカツフレンズ!』は、基本的にそれぞれの世界観が独立している作品だった(『アイカツスターズ!』での初代『アイカツ!』とのコラボエピソードなど、一部例外あり)。そんな異なる世界をつなぐ“扉”が現れたという設定で、シリーズに登場したすべての世界、すべてのアイドルたちがクロスオーバーする4作目『アイカツオンパレード!』の放送が2019年10月からスタート。

アイカツオンパレード!予告プロモーションビデオ

 それはシリーズファンにとっては夢のような作品であったと同時に、この時点で7年間続いてきたシリーズが、元々のターゲットであった女子児童よりも、シリーズを追いかけ続けてきたコアなファン層に向けた作風へと舵を切ったことも意味していた。

 この『アイカツオンパレード!』の半年間のテレビ放送と、番外編エピソードといえるWEB版の配信を終え、4本のシリーズ作品のテレビ放送を途切れることなく続けてきた『アイカツ!』シリーズは、その歴史上はじめての充電期間を設けることになる。

『アイカツプラネット!』は“等身大の憧れ”を描くための原点回帰作

 そんな中、シリーズ5作目として発表されたのが現在放送中の『アイカツプラネット!』だった。本作で登場人物たちは、現実とは異なる空間である「アイカツプラネット!」へとアイドルとしての“アバター”を介して入り込み、ここでアイドル活動を行う。現実世界が実写映像で、「アイカツプラネット!」の世界がアニメ映像で表現されているのだ。

 一見、これまでのシリーズとは大きく方向性が異なるように思える本作。もちろん大変革であるのは間違いなく、充電期間を設けたのも納得できるところだ。しかし同時に、実はシリーズで最も“原点回帰”を目指した作品であるようにも感じられる。

 それは女の子の“等身大の憧れ”を意識した作風であるという点だ。本作を象徴する台詞に「なりたい自分になれる場所、アイカツプラネット!」というものがある。この「なりたい自分になれる」をアニメ・アーケードゲームの双方を通して表現する最適解として選ばれたのが、実写×アニメだったのだろうということだ。

 “実在するキャスト”が演じる実写パートからアニメの世界へと入り込むというギミックは、作品世界を女の子たちにより身近な存在に感じてもらいたいといった意図が感じられる。これはアーケード筐体との連動をより強く意識したものでもあり、AKB48が絶大な人気を誇っていた初代『アイカツ!』の頃と異なり、ただ“アイドルになりきる”だけでは、魅力を感じてもらうことが難しくなってきたといった背景もあるように思う。

 また実写パートを導入したのには、『ひみつ×戦士 ファントミラージュ!』や『ポリス×戦士 ラブパトリーナ!』などの『ガールズ×戦士シリーズ』という女児向け特撮シリーズが、現在絶大な支持を得ていることも理由としてあるだろう。その時点での人気作のコンセプトを取り入れつつ、独自の作品へと変換するという手法も、初代『アイカツ!』が当時女子児童に支持されていた『プリティーリズム』シリーズの影響下で生まれた作品でもあることを思えば、その手法の最新アップデート版と捉えることができる。

 ちなみに『アイカツプラネット!』では主人公たちを支えるマネージャー役として、元AKB48の秋元才加が起用されている。初代『アイカツ!』のアーケード版でのAKB48メンバーとのタイアップが思い出されると同時に、アイドルとしてではなくアイドルを見守る大人としての起用であることが、時代の変化を感じるところだ。

異なる世界を“越境”し続ける『アイカツ!』シリーズの未来は……?

アイカツプラネット!第1話~第6話ダイジェストムービー

 長年にわたって続いてきた『アイカツ!』シリーズ。しかしそれは、商業的な発展性があるものだったとは言い難い。まだ『アイカツプラネット!』の挑戦が成功を収めるかは分からないが、遅かれ早かれ大きな変化は必要不可欠だっただろう。

 振り返ってみれば前作である『アイカツオンパレード!』は、シリーズを追い続けてきたコアなファンが“安心して楽しめる”作風を一度手放すために、必要な過程であったように思える。シリーズファンへのご褒美とも取れるこの“夢のようなひととき”がなかったら、『アイカツプラネット!』に対するファンの受け入れは、もっと難しかったかもしれない。

 また、作品世界を“越境”した『アイカツオンパレード!』に続くのが、次元の壁をも“越境”する『アイカツプラネット!』だったという意味で、この2作は紛うことなく『アイカツ!』シリーズの変化として流れを汲むものでもある……というのは、少々穿ち過ぎだろうか?

 これからの『アイカツプラネット!』、そして続いていくであろうまだ見ぬシリーズ作品が、今度はどのように世界を広げてくれるのか――期待で胸がいっぱいだ。

■小林白菜
ゲームやアニメーション、漫画などを中心に、作品の魅力について紹介する記事を複数のメディアに寄稿。アニメーションでは『プリキュア』シリーズや『アイカツ!』シリーズなど、女児向けの作品を特に好んでいる。noteTwitter

■放送情報
『アイカツプラネット!』
テレビ東京系にて、毎週日曜7:00~放送
企画・原作:BN Pictures
原案:バンダイ
総監督:木村隆一
シリーズ構成:千葉美鈴
制作プロダクション:BN Pictures
実写制作:東北新社
キャスト:伊達花彩、小椋梨央、渡邊璃音、長尾寧音ほか
(c)BNP/BANDAI, DENTSU, TV TOKYO, BNArts
公式サイト:http://www.aikatsu.net/
公式Twitter:@aikatsu_anime

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