『呪術廻戦』伏黒と加茂の術式がぶつかる 御三家の内情と花御によって明かされた目的とは

『呪術廻戦』伏黒と加茂の術式がぶつかる

 しかし伏黒もまた、この大会までの準備期間に自分の信念を貫く気持ちを強くしていた。虎杖と最初に出会った時から、伏黒は彼のような善人が死ぬのを見たくなくて虎杖を救ってきた。彼は“ヒーローではない、呪術師なのだ”。そして一度は虎杖を死なせてしまった。彼が生き返った時、改めて伏黒は虎杖を救うべきだと直感した自分の良心を信じることになる。彼を再び死なせない、という想いは強い呪力に。「自分の良心に従って人を助ける。それを否定されたら後は呪い合うしかないですよね」加茂に向けられたこの一言は、なんだかとても重みがあった。

 新たな式神・満象を召喚し、一騎打ちも白熱していたがそれを突如中断したのは花御の乱入だった。呪詛師が五条悟をはじく帷を高専内に降ろす中、一番先に花御に遭遇していた狗巻とともに伏黒と加茂は花御の動きを止めようとする。しかし、そんな彼らに花御が語りかけた。その内容とは、花御をはじめとする特級呪霊らの攻撃の意図だった。「この地球を守りたい」「森も海も空も、もう我慢ならぬと泣いています。これ以上人間との共存は不可能です」「彼らはただ“時間”を欲している。“時間”さえあれば星はまた青く輝く。人間のいない“時間”」そう、花御は話した。

 以前、真人が吉野順平に説明していたように、花御は森、漏瑚は大地、陀艮は海、そして真人は人間への恐れから生まれた特級呪霊である。漏瑚は呪いこそが“真の人間である”と主張し、呪いの権利向上に努めていたが、呪いの方が優れているという彼の主張の背景を、今回の花御の説明が補足している。人間による環境破壊つまり、自然界は怒っているのだ。何年もの間、自分の住む地球のことを顧みず、私利私欲のために資源を使い込んできた身勝手な人間らを淘汰する。どれだけ環境問題に取り組もうが、そうしないともう地球は元どおりに戻らないところまで来てしまった、というわけだ。この動機は画面越しの私たちにも強く訴えかけるものがある。

 一方で、生徒の安全確保のために帷の中に入り込んだ織姫と楽巌寺学長は人体から道具を生み出す呪詛師の組屋と出会う。その時、五条に「はい、おじいちいゃん。散歩の時間ですよ」と馬鹿にされてきた楽巌寺学長が文字通り“一肌脱ぎ”、超絶かっこいいロックンロール爺になる。オープニング映像の中でギターを演奏していた人物が楽巌寺学長だとわかるシーンなのだが、彼の術式は漫画よりも音の聞こえるアニメでの方が圧倒的に映えるはずだ。今回繰り広げられた加茂の赤血操術も血の赤色がわかるからこそ目で追いやすく、何が起きているのか把握しやすい。そういった意味でも、改めてアニメ版の真価を感じさせる第18話だった。来週の第19話は、遂に呪言師の狗巻が活躍する回。伏黒の鵺も、加茂の赤血操術も効かなかった花御だが、狗巻の術式は十分に効果があった。それだけでもやはり狗巻が強いことがわかるわけだが、果たしてその戦いの行く末は。さらに、予告映像では虎杖が新技“黒閃”を繰り広げようとした動作が見受けられた。これにも是非、期待したい。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。今週のじゅじゅさんぽの花御が可愛かった。InstagramTwitter

■放送・配信情報
『呪術廻戦』
MBS/TBS系にて、毎週金曜深夜1:25〜放送中
Amazon Prime Video、dTV、Netflix、Paravi、U-NEXTほかにて配信中
原作:『呪術廻戦』芥見下々(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:朴性厚
シリーズ構成・脚本:瀬古浩司
キャラクターデザイン:平松禎史
副監督:梅本唯
美術監督:金廷連
色彩設計:鎌田千賀子
CGIプロデューサー:淡輪雄介
3DCGディレクター:兼田美希、木村謙太郎
撮影監督:伊藤哲平
編集:柳圭介
音楽:堤博明、照井順政、桶狭間ありさ
音響監督:藤田亜紀子
音響制作:dugout
制作:MAPPA
(c)芥見下々/集英社・呪術廻戦製作委員会
公式サイト:https://jujutsukaisen.jp/#index

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