2021年の基準は『トップガン マーヴェリック』?  混乱するハリウッド映画の最新動向

2021年劇場公開の基準は『トップガン』?

 もう一つは、昨年多く見られた中規模作品のストリーミングサービスへの売却の動きが鈍っていること。先に挙げた作品の中では『クワイエット・プレイス 破られた沈黙』がそれに当たるが、先がまったく見えない中での苦肉の策としてのストリーミングサービスでの公開ではなく、ここまできたら劇場再開を待とうというムードが映画業界において生まれているという。『トップガン マーヴェリック』の7月2日を基準とするなら、それまでに公開予定の『ブラック・ウィドウ』(5月7日全米公開予定)、『ワイルド・スピード/ジェットブレイク』(5月28日全米公開予定)、『Venom: Let There Be Carnage(原題)』(6月25日全米公開予定)などは公開延期が予想されることになるわけだが、仮にさらに公開延期になったとしても(これまでの流れからいくと、最もありえそうなのは『ブラック・ウィドウ』のディズニープラスでの公開だが)、ストリーミングサービスで公開されることはないと見られている。

 一方、昨年11月に早々と2021年公開作品のすべてを劇場公開と同日にストリーミングサービス(HBO Max)で公開すると決定したワーナーは、5月から急遽2ヶ月間前倒しして3月26日に世界公開することになった『ゴジラ VS コング』を、今度は北米だけ5日間遅らせて3月31日に公開する、と少々混乱気味。『ゴジラ VS コング』がさらに複雑なのは、日本ではワーナーではなくゴジラの権利の関係で「東宝グローバルプロジェクト」として東宝が配給する作品であること。ただでさえ多くの作品が公開延期となっている東宝にとって、ここにきて世界公開や北米公開の急なスケジュール変更は大迷惑だろうが、果たして日本でも本当に3月中に公開されるのだろうか? 続報を待ちたい。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『トップガン マーヴェリック』
2021年 全国ロードショー
監督:ジョセフ・コシンスキー
脚本:クリストファー・マッカリーほか
製作:ジェリー・ブラッカイマー、トム・クルーズ、クリストファー・マッカリー、デヴィッド・エリソン
出演:トム・クルーズ、マイルズ・テラー、ジェニファー・コネリー、エド・ハリスほか
配給:東和ピクチャーズ
(c)2021 PARAMOUNT PICTURES. ALL RIGHTS RESERVED.
公式サイト:https://topgunmovie.jp/
公式Twitter:@TopGunMovie.jp
公式Instagram:@TopGunMovie.jp

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる