ファンが本当に見たかった物語の続き 『ジュラシック・ワールド/サバイバルキャンプ』の凄さ

ファンが望んだ“ジュラシック・ワールド”

スリル満点な恐竜はアニメーションも神クオリティ 

 キャラクター、物語、音楽がどれだけ良くても、やはり『ジュラシック』シリーズの主役は恐竜だ。アニマトロニクスとVFXを掛け合わせて、どの恐竜映画のそれよりもリアル志向で作り上げられた『ジュラシック』シリーズの恐竜たちは、アニメーションになってもそのクオリティが落ちることはない。むしろ、より高くなっていて驚いた。アニメーター陣はそれぞれの恐竜の動きをしっかり過去作からトレースしていて、これまでの作品を何度も観て勉強したんだろうな、という気概を感じる。本作にはシリーズを通して王女の座に君臨するレクシィことTレックスをはじめ、ブルー率いるラプトル4姉妹も登場するが、他にもアンキロサウルスやシノケラトプスと、シリーズにちょろっと顔を出しただけでこれまでガッツリ活躍してこなかった恐竜にフォーカスが当たっているのが良い。特に、『サバイバル・キャンプ』では影が薄かった肉食恐竜カルノタウルスがヒロインに大抜擢されていて、ファンとしては嬉しいばかりだ。

 こうして、シーズン1は途中からインドミナスレックスが脱走し、パーク崩壊のシナリオが進んでいく。キャンプに参加していた少年少女らも同じように島からの脱出を目指すが、カルノタウルスやプテラノドン、モササウルスなどの猛者に襲われ続けていく。アクションシーンは実写顔負けのスリルと迫力があって、正直実写作品の大人たちよりも酷い目に遭っている子供たちに同情する。

ディテールの再現の的確さ 過去作との繋がりを探す楽しみ

 さて、ブルーやレクシィといった恐竜以外でも、シリーズお馴染みのキャラクターが登場のも過去作ファンとしては楽しめるポイントだ。最たる例はヘンリー・ウー博士。『ジュラシック・パーク』にも登場し、『ジュラシック・ワールド』ではすっかり闇堕ちした彼が再登場したことで話題となった。彼はこのアニメ版にも顔を出してくれるわけだが、10代のインフルエンサー女子に「どのぐらいのフォロワーが見ているの?」と自分の名声をアピろうとする姿勢を見せるなど、本家でも見え隠れした腹黒さがしっかり描かれている。

 そしてパーク内の様子にも是非注目していただきたい。シーズン2では崩壊後のパークに取り残された少年少女が、無線連絡をしようとメインストリートにやってくる。お土産ショップやレストランがすっかり朽ちたそこは、しっかりインドミナスレックスとTレックスの死闘の後が残っている。そして売店の様子やコンプソグナトゥスが登場する、という点も『炎の王国』でクレア一行が再び訪れたときと全く同じ。恐竜の描き方だけでなく、情景・背景も含めてしっかりと映画にリンクしている描写が多く、どれもが細かくて的確だ。

 そういうディテールは、映画を愛したファンだからこそ「あっ、これは!」と発見して楽しむことができる。そういう意味で、本アニメは製作陣の本気と、過去作への敬意の塊と言っても過言ではないのだ。ファンが観て、喜べるものをふんだんに劇中に盛り込まれている本作は、まさしく誰もが望んだ『ジュラシック』作品なのである。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。『ジュラシック・パーク』にこの身と心を捧げている。『ジュラシック・ワールド3』のパンフレットに寄稿するのが夢。InstagramTwitter

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『ジュラシック・ワールド/サバイバル・キャンプ』
Netflixにて独占配信中

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる