『約束のネバーランド』実写版特有のアドバンテージとは? アニメ版と比較して考える

『約束のネバーランド』実写とアニメを比較

 実写版の企画は、漫画連載が始まって間もない2016年に生まれたということで、アニメ版の成功を受けてから立ち上げられたものではないそうだが、好評を博したアニメ版よりも後に世に出ることになったため、何かと比較されてスタッフ、キャスト共に苦労したと思われる。それでも海外まで撮影に行かずとも、原作の雰囲気そっくりのロケ地を探し出したこと、前述の通り異形の鬼と俳優が同一画面に存在できるデジタル合成の巧みさ、北川景子が演じるママの優しさと恐ろしさを体現する二面性の演技など、実写映画特有のアドバンテージは多い。

 セット撮影とロケを組み合わせたGFの美術も素晴らしい。原作漫画やアニメに触れていない観客は、『約ネバ』の世界観ともども驚きをもって迎え入れられると思う。特に映画のクライマックスで見られるエマとママの緊迫した会話劇は見ものだ。ママのさらに上の存在であるグランマ役の三田佳子も、短い出番ながら流石の存在感を放ち、大人側のキャストは総じて好演が光る。実写版はどんな出来だろう?と気になっている人にはお薦めしたい。

■のざわよしのり
ライター/映像パッケージの解説書(ブックレット)執筆やインタビュー記事、洋画ソフトの日本語吹替復刻などに協力。映画全般とアニメを守備範囲に細く低く活動中。

■公開情報
『約束のネバーランド』
全国公開中
出演:浜辺美波、城桧吏、板垣李光人、渡辺直美、北川景子ほか
原作:『約束のネバーランド』白井カイウ・出水ぽすか(集英社ジャンプコミックス刊)
監督:平川雄一朗
脚本:後藤法子
配給:東宝
(c)白井カイウ・出水ぽすか/集英社 (c)2020 映画「約束のネバーランド」製作委員会

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