綾瀬はるかと高橋一生でなければ成り立たない!? 『天国と地獄』で“入れ替わり”の名演技

『天国と地獄』オリジナル脚本の醍醐味が満載

入れ替わりがハッキリとわかる綾瀬と高橋の名演技

 チリリン――。

 この音が鳴る度に見逃してはならないものが映し出される。そんな演出も、視聴者の想像が捗るヒントだ。

 まずは、2人の無意識に出る癖。彩子は考えごとをするときには、腕を組み、右手の指がトントンと動く。一方、日高も思考を整理するように右の耳たぶを触る。そして瞬きを忘れたように見つめ首を鳴らす。第1話を観たところ、その癖に気づいているのは、彩子の同居人の陸だけのようだ。彩子が指をトントンとした瞬間に「あっ」という表情を浮かべており、陸との共同生活から入れ替わりが気づかれるのではないかと期待が膨らむ。

 さらに、口調。彩子は紅一点として奮闘していることから、呼吸も浅めで言葉遣いも強気だ。後輩の八巻に対して「ゆとりハチマキ」と呼びつけ、河原を影では「セク原」と言ってみせるなど、子供っぽいところがある。対して、日高は敬語を基本にした余裕のある紳士的なコミュニケーションを心がけ、誰からも感じのよい人として認識される。彩子の部下・八巻、日高の秘書・五木(中村ゆり)が違和感を持つのではないかと緊張が高まる。

 だが、その違いをこうして見受けられるのも、綾瀬と高橋の演技力があってこそ。階段から落ち、魂が入れ替わった後に、目覚めた2人の反応も実に対照的で、その魂(役柄)が入れ替わったことがハッキリとわかる。

 高橋は今後、綾瀬が演じた彩子を演じながら日高を演じなければならない。綾瀬に至ってはさらに複雑で、高橋が演じた日高を宿した彩子を演じながら、さらにサイコパスなシリアルキラーである顔を封じ込んた善人の顔も作り続けなければならない。2人でなければ成り立たない演技力のぶつかり合いに、思わずしびれる。

 「むしろラッキー」だと言い放った日高の狙いは何なのか。そして、彩子はこのまま利用されてしまうのか。追い込む綾瀬と追い込まれる高橋。2人の真剣勝負を毎週観られるかと思うとゾクゾクする。

■放送情報
日曜劇場『天国と地獄 ~サイコな2人~』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:綾瀬はるか、高橋一生、柄本佑、溝端淳平、中村ゆり、迫田孝也、林泰文、野間口徹、吉見一豊、馬場徹、谷恭輔、岸井ゆきの、木場勝己、北村一輝
脚本:森下佳子
編成・プロデュース:渡瀬暁彦
プロデュース:中島啓介
演出:平川雄一朗、青山貴洋、松木彩
製作著作:TBS
(c)TBS

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