グロさ満点なのになぜ人気? 一気観必至の韓国産ホラー『Sweet Home』の魅力は構成にあり

韓国発『Sweet Home』人気の理由

推しが必ず見つかる! 魅力的なキャラクターの立て方

 うまいのは脚本とその運び方だけではない、登場するキャラクター自身もめちゃくちゃ良い。『ミスト』や『ドーン・オブ・ザ・デッド』のように、モンスターパニック系の作品は最終的に見知らぬ誰かとともにどこかに籠城することになる。そういう時、“大抵はいるよね、こういう人”という人が、本作には余すことなく登場する。後ろ向きな姿勢の主人公、ガジェットに強いおっちゃん、怖そうなヤクザ、サイコパス、熱心なキリスト教信者、自衛隊員、戦闘力抜群の美人のお姉さん、貧乏人を見下すおばさま……挙げ出したらキリがない!

 そんなお決まりの種類のキャラクターが、少し典型からズレた活躍をするのもアツい。例えば、顔に火傷の傷があるヤクザのお兄さんは最初誰かを拷問していたりするのだが、彼が後半にかけて実は凄くいい奴であることがわかったり、キリスト教信者はこういう事態に陥ったら要注意危険人物になりがちであるのに、刀を使いこなすヒーローになったり。モブキャラなんかいない、ってほどそれぞれの人物の個性がしっかり出ている。キャラクターの立て方だけでなく、その活かし方も非常に優れたドラマなのだ。

莫大な予算と高い技術で生み出された、圧倒的なクオリティのCG

 しかし、どんなに物語が面白くて登場人物が魅力的でも、やはりモンスター系の作品ならそのビジュアルやCGIのクオリティってかなり重要だ。むしろ、安っぽいと一気にチープな雰囲気になって白けてしまう。ところがそこもやはり韓国産、CGI技術はハリウッド顔負けのトップクラスと言っていいだろう。非常に怖いし、殺戮描写がえげつない。何を隠そう、製作費は1話あたり約30億ウォン、日本円に換算すると約2億8500万だ。1話だけで! この莫大な予算と、業界屈指の技術を掛け合わせれば鬼に金棒である。

 そして本作は先に述べたように視覚に情報が完結していると言っても過言ではないほど、映像表現が優れている。モンスター造形もそれぞれ個性的だし、何より“元は人間だった”という設定をしっかり活かしたビジュアルであることが興味深い。首が伸びて頭部が目玉だけになったり、腕が凄く伸びたり。恐らく四六時中プロテインのことしか頭になかったボディビルダーが怪物化したのだろうな、という怪物も登場する。そういった生前の肉体的特徴が、そのままモンスターの特徴になっていることを含めて、ビジュアルに意味性があることがとても良い。

 シーズン1は全10話。最終話は衝撃に衝撃が畳みかけられるような展開になっており、早くもシーズン2が待ち遠しい。

※山崎賢人の「崎」は「たつさき」が正式表記。

■アナイス(ANAIS)
映画ライター。幼少期はQueenを聞きながら化石掘りをして過ごした、恐竜とポップカルチャーをこよなく愛するナードなミックス。レビューやコラム、インタビュー記事を執筆する。モンスターパニック映画で多分中盤まで生き残るタイプ。InstagramTwitter

■配信情報
Netflixオリジナルシリーズ『Sweet Home -俺と世界の絶望-』
Netflixにて、シーズン1全世界同時配信中

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