年の瀬に考える、「作家の映画」と「企業の映画」の違い

「作家の映画」と「企業の映画」の違い

 来年1月23日に『シン・エヴァンゲリオン劇場版』が公開されると、3カ月ぶりに出現した『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』と「ようやくまともに戦える」ライバルの存在に、きっとまた各メディアは湧き立つことだろう。しかし、これに関しても事前に釘を刺しておかなてはいけない。庵野秀明が総監督、原作、脚本を手がける『シン・エヴァンゲリオン劇場版』は、言うまでもなく「企業の映画」ではなく「作家の映画」であり、それどころか製作委員会方式さえ採用していない、カラーの一社による、ルーカス時代の『スター・ウォーズ』以来この規模の作品としては世界的にも例のない「自社製作作品」である。

 多くの観客にとっては、「作家の映画」であろうと「企業の映画」であろうと、どちらでもいいことだろう。しかし、興行収入について何かを論じるなら、その作品を背負ってる作家の重責や、そこで払われているリスクの大きさも込みで評さなければ、ただの数字遊びに過ぎない。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』
全国公開中
声の出演:花江夏樹、鬼頭明里、下野紘、松岡禎丞、日野聡、平川大輔、石田彰
原作:吾峠呼世晴(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
監督:外崎春雄
キャラクターデザイン・総作画監督:松島晃
脚本制作:ufotable
サブキャラクターデザイン:佐藤美幸、梶山庸子、菊池美花
プロップデザイン:小山将治
コンセプトアート:衛藤功二、矢中勝、樺澤侑里
撮影監督:寺尾優一
3D監督:西脇一樹
色彩設計:大前祐子
編集:神野学
音楽:梶浦由記、椎名豪
主題歌:LiSA「炎」(SACRA MUSIC)
アニメーション制作:ufotable
配給:東宝・アニプレックス
(c)吾峠呼世晴/集英社・アニプレックス・ufotable
公式サイト:https://kimetsu.com
公式Twitter:@kimetsu_off

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「興行成績一刀両断」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる