篠原涼子、『おちょやん』道頓堀編を牽引した強さと愛情 視聴者の心を打った“母”としての言葉

篠原涼子、『おちょやん』牽引した強さと愛情

 第4週では、千代はテルヲの借金のカタに身売りさせられそうになってしまう。それでもシズは気を揉む様子を見せなかった。お茶子たちが動揺しているからこそ、表面上は冷静さを保つ。最善の道を探りつつ、千代に対しても甘えさせることはない。危機管理能力もずば抜けている。

 そして、千代の父親の借金問題だけでなく、千代の将来を深く案じていたシズは、最初から千代を借金取りから逃がす計画を練っていた。お金で解決するだけなら、結局お金で千代をまたここに縛りつけてしまうことになる。今まで自分のために生きられなかった千代を、これからは自分のために生きるようにと説得するシズ。

 シズは「あんた、わてに恩返しがしたい言うてくれたな。せやったら、あんたが幸せになり。それがわての望みや」と「岡安」に迷惑をかけたことを心配する千代の幸せを願う。「岡安」の人たちだけでなく、道頓堀の人々が千代を借金取りから逃がそうと一致団結した第20話は、放送時間が15分とは思えないほど、起伏に富んだ愛情深い展開となった。

 千代に対しては強く、慈悲深い母のような表情を見せたかと思えば、威勢のいい啖呵を切って借金取りを撃退する。篠原涼子の胸がすく演技で『おちょやん』は、2020年の放送を締めくくった。

 「これは(ただ逃げるのではなく)旅立ちだす」「しんどなったら、いつでも帰っといで」と千代に対してシズがかけた言葉は、多くの視聴者に“母親”の存在を思い出させたように思う。年明けから「京都編」に入り、シズの出番はしばらくなるなると思われるが、また千代の背中を押す存在として登場してくれるだろう。

■池沢奈々見
恋愛ライター。コラムニスト。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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