『ワンダーウーマン 1984』初登場6位 危惧されるハリウッド映画興行の悪循環

危惧されるハリウッド映画興行の悪循環

 また、そもそも初夏に緊急事態宣言が明けてからは、劇場でかかっているハリウッド映画が極端に少ないため、習慣的に映画館で映画を観賞する一般層への予告編などでのプロモーションがほとんど機能していないという事実もある。『鬼滅の刃』や『新解釈・三國志』の観客は、あくまでも『鬼滅の刃』や『新解釈・三國志』の観客だ。もちろんその層によって現在の興行は支えられているわけで、映画関係者は感謝しなくてはいけないのだが、2020年3月まで映画館に足繁く通っていた観客は「本当はまだ戻っていない」、あるいは昨今の感染再拡大を受けて「再び離れた」という現状認識が必要だろう。

 日本よりもさらに深刻な状況にある北米に拠点を置くハリウッド・メジャーの、映画館を切り捨てて、クリエイターを蔑ろにして、自社の業績と株主の利益ばかりを優先した業態移行にともなう混乱による影響と、それによって日本映画に頼らざるを得ない興行。そして、「本当はまだ戻ってない」観客。それらの問題はまだ当分は解決しそうにないし、もしかしたら解決する日がやってくることはなく、2020年を境に日本の映画興行はこれまでとはまったく別のフェーズに入っているのかもしれない(自分はそれを最も危惧している)。ハリウッド映画の悪循環は続く。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『ワンダーウーマン 1984』
全国公開中
監督:パティ・ジェンキンス
出演:ガル・ガドット、クリス・パイン、クリスティン・ウィグ、ペドロ・パスカル、ロビン・ライト
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved TM & (c) DC Comics

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