杉咲花、『おちょやん』本格登場週で示した主演としての強さ ドスの利いた台詞も楽しみの一つに

『おちょやん』杉咲花、主演としての強さ

 恩返しがしたい一心から、早川延四郎(片岡松十郎)に会いに行くべきだとシズを説得する場面は、第3週のハイライトの一つであり、勇敢で芯を曲げない千代のキャラクター性が強く出た名場面。ライバル芝居茶屋のお茶子をぎゃふんと言わせるのとはわけが違う、自身が務める女将を納得させるのは至難の技だ。千代はそれを正直で真っ直ぐな思いと、真摯な態度でシズを延四郎の元へと向かわせた。視線を逸らしたら負け。そんな篠原涼子との演技と演技のぶつかり合いは、ドラマ、映画と数多くの作品で主演を張りってきた杉咲の凄みが感じられる。延四郎と悔いを残すことなく別れを告げたシズの「あんたのおかげだす」に返す、千代の「へえ!」は同じ言葉でも第3週の幕開けとはまた響き、意味合いの違う一言だ。

 かと思えば、百合子に感化され、一人芝居を玉(古谷ちさ)と里子(奥野此美)に見せつけるお茶目な千代もいる。「わたしには神聖な義務がほかにあります!」「どんな義務……」。とタイトルバックでぶった切られる、朝ドラあるあるの洗礼も受けた杉咲。テルヲ(トータス松本)の登場で波乱を呼びそうな第4週「どこにも行きとうない」の予告では、千代が涙ながらに岡安にいたいと声を張り上げる場面も。『おちょやん』はまだまだ始まったばかり。これからの約半年、『おちょやん』を通してさらなる杉咲の女優としての姿が映し出されていくことだろう。

■渡辺彰浩
1988年生まれ。ライター/編集。2017年1月より、リアルサウンド編集部を経て独立。パンが好き。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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