田中圭とサスペンスの相性は? 『先生を消す方程式。』から探る

田中圭とサスペンスの相性は?

 こうした田中の特長が全開になったのが『あなたの番です』(日本テレビ系)である。「交換殺人ゲーム」に巻き込まれた住人たちが次々と殺されるミステリーは、半年間にわたって放送。同作は原田知世と田中のダブル主演だが、後半の『反撃編』は田中の単独主演であり、身近なマンションを舞台にしたサスペンスタッチの作風が反響を呼んだ。「毎週、死にます。」のキャッチコピーのもと、ネットを中心に考察ブームが起きたことも記憶に新しい。

 真相が明かされていく過程で、犯人をめぐる考察も加速。田中演じる手塚翔太の黒幕説も飛び出した。手塚が犯人として疑われた理由として、アリバイの前後関係とともに挙げられたのが、表情を読ませない田中の演技。さわやかな見た目とは裏腹に、妻の復讐に執念を燃やすギャップや、時折見せる無表情さが視聴者に「何かあるのでは?」と勘ぐらせた。最終的に「主人公は黒幕ではない」というミステリーの法則は守られたが、そう思わせた田中の演技を褒めるべきだろう。

 『先生を消す方程式。』にも田中の様々な表情が詰め込まれている。歯を見せて笑う公式ビジュアルは、どこか不気味な雰囲気を漂わせており、生徒の前で「嫌いじゃないです」と言って見せる微笑には、無理に口角を上げているようなぎこちなさがある。ゾンビとして復活した姿は、異界のおどろおどろしさを身にまとっている。一方で、静との回想場面では柔らかい表情を見せ、授業で生徒に向かう姿からは真剣な情熱がほとばしっている。

 先の読めないストーリー展開に生気を吹き込む田中は、ミステリーやサスペンスでも大いに力を発揮するはずだ。2021年2月公開予定の映画『哀愁しんでれら』では、『図書館戦争』シリーズで共演した土屋太鳳とタッグを組み、幸せの絶頂から狂気に転落する女性夫婦を演じる。笑顔の奥に隠されたもうひとつの人格は、どんなドラマを生むだろうか? 俳優・田中圭には、まだまだ私たちが知らない顔がありそうだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
『先生を消す方程式。』
テレビ朝日系にて、毎週土曜23:00~23:30放送
出演:田中圭、山田裕貴、高橋文哉、久保田紗友、森田想、高橋侃、秋谷郁甫、奥山かずさ、榊原有那、川瀬莉子、田中亨、松本まりか
脚本:鈴木おさむ
音楽:HAL
監督:小松隆志ほか
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:秋山貴人(テレビ朝日)、遠田孝一(MMJ)、小路美智子(MMJ)
制作:テレビ朝日/MMJ
(c)テレビ朝日
公式Twitter: https://twitter.com/senkesu5
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