『おちょやん』篠原涼子×井川遥が体現した“大人の別れ” 次週はテルヲ再登場で波乱の予感

篠原涼子×井川遥が体現した“大人の別れ”

 そんな“別れの日”から1カ月後、シズの元に延四郎の訃報が届く。延四郎は重い病気を隠したまま舞台に立ち、最後にどうしてもシズに別れを告げたかったのだ。シズは彼のことを「板の上以外では芝居が下手くそ」と言っていたが、シズの背中を見送るその時まで嘘も別れの涙も隠し通した延四郎は名役者だった。シズも真実を知り、「最後の最後にすっかり騙されてしもうたがな」と静かに涙を流す。そして、千代は無事に年季明けを迎え、正式にお茶子として岡安で働くことに。一件落着と思いきや、千代の前に父・テルヲ(トータス松本)が現れ、今週の『おちょやん』は波乱の予感させる幕閉めとなった。

 第3週「うちのやりたいことて、なんやろ」は、女優・篠原涼子と井川遥の演技が光った。篠原は近年『愛を乞うひと』(日本テレビ系)や映画『人魚の眠る家』など、母親役が増えてきているが、今回演じるシズもある意味、主人公・千代の母親的存在。お茶子を育て上げる厳しい女将でありながら、ふとした瞬間に千代や他のお茶子に見せる表情が子を見守る親のように優しい。そんなシズを篠原はセリフではなく、瞳で語っているように思う。子供の頃の千代(毎田暖乃)が「ここにおいてください」と請う第10話の場面では瞳に同情や優しさが点り、延四郎との会話では彼に恋した頃のように瞳が色めき立った。

 一方の井川演じる百合子もキャラクター像が掴みづらい人物だ。普段は凛としているが、岡安に匿われているときには夕飯を一目散に食べる無邪気さもあらわに。圧倒的な美しさで千代が憧れる女優としての説得力を持たせながら、なおかつちょっとしたコミカルな演技で親しみやすさも感じさせる。この2人は本作を通じてシズ、百合子として千代に影響を与えながら、女優として千代を演じる杉咲にも影響を与える存在になるだろう。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥、中村鴈治郎、名倉潤、板尾創路、 星田英利、いしのようこ、宮田圭子、西川忠志、東野絢香、若葉竜也、西村和彦、映美くらら、渋谷天外、若村麻由美ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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