国民的猫型ロボットが落ちこぼれであることを思い出したい『STAND BY ME ドラえもん2』

ドラえもんは完璧な存在ではない?

ブラックユーモア溢れる存在 道具は出せてもモラルは低い?

 ドラえもんは、その四次元ポケットの中からのび太に必要なひみつ道具を出していく。ほぼ、どんなピンチにも対応できる道具を次から次へと用意するので、まるで高スペックロボットのような印象を受ける。しかし、ひみつ道具が出せるからといってドラえもんが人格者というわけではない。

 ある時、のび太がテスト前日に慌てふためいていたら「学校を吹き飛ばせばテストがなくなる」とか「動物ライトで先生をゴリラにしよう」など、とにかくモラルのかけらもない発想ばかり。最終的に出した「アンキパン」も、のび太に自らテスト勉強をさせる機会を奪う悪質なチート道具だ。他にも、のび太がスネ夫にいじめられた時、彼の弱みを握ってやろうと「スパイセット」を使って恐喝ネタを探るなど、大人気がない。すぐに楽をしようとするのび太に、あえてヤバい道具をつかませる意地悪さもあって、そういうモラル度外視のブラックユーモア溢れる笑いと楽しさがドラえもんの持ち味だった。


 それに、ドラえもんが逆にそんな風にいい加減で頼りないからこそ、のび太が自発的にしっかりしていく空気感もあった。思えば初期の『ドラえもん』は基本的にのび太が学校でいじめられて泣きながら帰ってきたのを見て、ドラえもんの方がそれに怒るという順序だった。のび太はただ悲しくって、どうしたらいいかわからないだけ。そんな彼に「もっと怒るべきだ! なめられんなよ!」と焚きつけるドラえもん。すると、のび太が「確かに! なんだかムカムカしてきたぞ!」と、ひみつ道具を要求しはじめる。これ、本来は怒るのび太をドラえもんが「まあまあ」と嗜める役目のはずなのに……。

 加えてのび太が、ドラえもんが考えなしに渡してくる道具の使用をめぐって、自発的に善悪の判断を学んでいく場面も多かった。例えば宿題を早く終わらせたいと言うのび太に、ドラえもんが渡した「コンピューターペンシル」。これを使えば、一度はテストで百点をとるという夢が叶う! 嬉々としたのび太はドラえもんにペンシルを返さないでいたが、次の日彼は軽蔑されることを恐れて結局道具を使わずに試験に挑んだ。

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