「うちがあんたらを捨てたんや」 『おちょやん』千代の強く切ない故郷からの旅立ち

『おちょやん』千代の故郷からの旅立ち

 そして、旅立ちの日。気丈に振る舞ったまま家を出た千代だったが、後を追ってきたテルヲの姿に安堵した表情を見せる一幕も。きっとテルヲが自分を迎えにきてくれたと思ったはずだ。けれど、テルヲはサエの写真を渡すために追いかけて来ただけ。まるでサエが生きていた頃の思い出までも葬りさるかのような父親に、千代は「うちが捨てられたんやない。うちがあんたらを捨てたんや」と強烈な言葉を残し故郷を後にした。

 喜劇女優・千代の物語は、そんな悲しい幼少期の記憶から始まる。しかし、千代の悲惨な過去とは裏腹に、毎田や原といった子役たちの豊かな表情が私たちを笑顔にしてくれた。小学校の先生が藤堂先生(森山直太朗)と優しい雰囲気が似ていたり、奉公に出る千代が竹取物語のかぐや姫に例えられたりと、どこか前朝ドラの『エール』の名残りを感じた人もいるのではないだろうか。

 まだまだエールロスの人もいるかもしれないが、前作からバトンを引き継いだ『おちょやん』も“涙あり笑いありの楽しいひと時”を届けてくれるだろう。

■苫とり子
フリーライター/1995年、岡山県出身。中学・高校と芸能事務所で演劇・歌のレッスンを受けていた。現在はエンタメ全般のコラムやイベントのレポートやインタビュー記事を執筆している。Twitter

■放送情報
NHK連続テレビ小説『おちょやん』
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:杉咲花、成田凌、篠原涼子、トータス松本、井川遥ほか
語り:桂吉弥
脚本:八津弘幸
制作統括:櫻井壮一、熊野律時
音楽:サキタハヂメ
演出:椰川善郎、盆子原誠ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/ochoyan/

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