映画の「Go Toイベント」の行方は? 感染再拡大が映画興行に及ぼす影響

 現在の興行概況といえば、『鬼滅の刃』の独り勝ちを横目に、日本映画の特に実写作品にはめぼしいヒット作が見当たらず、今後もしばらく期待できる作品は少ない。12月18日公開の『ワンダーウーマン1984』以外、ハリウッドの大作映画の新作の配給も止まったままだ。実際のところ、仮にこの時期に映画の「Go Toイベント」キャンペーンが開始されていたとしても、感染拡大どこ吹く風で数字を積み上げている『鬼滅の刃』にさらに多くの客が押し寄せるばかりで、映画業界全体への効果は限定的だったのではないか。また、もし見切り発車でキャンペーンが始まっていたら、現在の「Go Toトラベル」のように批判に晒されて、映画業界全体のイメージダウンとなっていたかもしれない。

 そう考えると、感染再拡大によって映画の「Go Toイベント」が先送りになってしまったことに、そこまで悲観的になる必要はないのかもしれない。重要なのは、今年公開延期となってしまったいくつもの新作が無事公開されて、外国映画の配給も平常におこなわれるようになった時期、つまり、映画館がその本来の多様性を取り戻した時まで、キャンペーンが続いていることなのではないだろうか。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

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