『エール』というタイトルは運命的なものだった チーフ演出・吉田照幸に聞く最終週の意図

『エール』最終週の意図をチーフ演出に聞く

奇跡としかいいようがない第119話

 コンサートによる最終回の前、第119話が本編の最終回となるが、ここでは今年逝去された志村けんさん演じる小山田耕三が回想の形で登場する。

「第119話に関しては2つやることがありました。ひとつは小山田さん、もうひとつは裕一と音の夫婦の結末。手紙という形で小山田が裕一に抱いていた思いが明らかになりますが、文面に関しては僕自身の志村さんへの思いと通ずるところがあります。撮影中はプレビュー画面を涙で見ることができませんでした。このシーンだけではありませんが、キャスト、スタッフ全員が志村さんへの思いを胸に撮影に臨んでくれていました。悲しいシーンではあるのですが、窪田さんが感傷的な芝居にはせず、志村さんへの思い汲んだ非常に抑えた芝居をしてくれました。改めて素晴らしい役者さんだなと心の底から思いました。登場する志村さんの映像はたまたま撮っていたオフショットを使用しています。そのカットが残っていたことも含めて、計算できない奇跡としかいいようがないものが生まれたと思います。裕一と音の最後のシーンに関しても、こちらは演出らしいことはせず、窪田さんと二階堂さんの2人に任せたものです。2人の関係でしか生まれないものがあると思っていたので、極力カメラを遠くにおいて野放しに近い状態で。2人の人生の重みが凝縮された素晴らしいシーンになっていると思います」

 イレギュラーだらけの作品となった『エール』だが、制作チームは揺るぎない絆で結ばれた一作となった。

「今回は感染症対策の撮影など、全員が初めての経験を余儀なくされた現場でした。あらゆることをすべて自分たちで考えてやっていかないといけない。それによって、キャスト、スタッフ全員が受け身ではなく、能動的に参加してくれたように思います。その結果、全員の思いを繋ぎながら作品を作ることができました。長丁場の撮影は団結が強固になることもあれば、早く解放されたいとなる場合もあります。本作は非常に不幸な出来事もありましたが、作品に関わるすべての人がひとつのゴールに向かってまとまることができた。今回は打ち上げもできませんでしたが、1年後か2年後、マスクを外して皆で再会したいと心から思います。窪田さんもその気持ちが強かったですね。期せずして『エール』というタイトルだったことに、全員が運命的な役割を感じていたように思います。最後のコンサート回を含めて、音楽の魅力が詰まった作品になったと思いますので最終回まで楽しんでいただければ幸いです」

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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