宮藤官九郎×長瀬智也、再タッグに寄せる期待 クドカン×ジャニーズという組み合わせの妙

 『池袋ウエストゲートパーク』以降、ジャニーズアイドルはクドカンドラマの常連となっている。青春ドラマ『木更津キャッツアイ』(TBS系)では、V6の岡田准一と嵐の櫻井翔が、20歳を過ぎても地元で仲間たちとつるんでいるマイルドヤンキーの青年役で出演。

 恋愛ドラマ『マンハッタンラブストーリー』(TBS系)では、無口な喫茶店の店長をTOKIOの松岡昌宏が演じた。『タイガー&ドラゴン』は『池袋ウエストゲートパーク』の長瀬智也と『木更津キャッツアイ』の岡田准一が主演を務めた当時のクドカンドラマの集大成。被害者遺族の復讐を描いたミステリードラマ『流星の絆』(TBS系)では、嵐の二宮和也と関ジャニ∞(当時)の錦戸亮が兄弟役を演じた。そして学園ドラマ『ごめんね青春!』(TBS系)では、錦戸が主人公の教師を演じ、ジャニーズWESTの重岡大毅が生徒役で出演した。

 近年、宮藤と組む機会が多いのは生田斗真だ。『うぬぼれ刑事』以降は、大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(NHK総合)では痛快男子・三島弥彦、単発ドラマ『JOKE~2022パニック配信!』(NHK総合)では動画配信を生業とするお笑い芸人を演じた。映画では宮藤が脚本を担当した三池崇史監督の『土竜の唄』シリーズに出演している。

 松尾スズキが主宰する劇団「大人計画」に所属する宮藤は、サブカルチャーの世界で活躍していた。一方、ジャニーズアイドルはテレビを中心とした芸能界のド真ん中を行く存在。両者の立ち位置は真逆だったが、ジャニーズ事務所は宮藤の才能を高く評価し、所属アイドルのドラマを作ることで共に成長してきた。

 クドカンドラマは当て書きが多く、ジャニーズ俳優が演じる役も本人の個性を生かしたキャラクターとなっている。役柄の共通点は、小学生がそのまま大人になったようなバカで明るい男の子と言ったところか? 他の俳優が演じると生々しくなりすぎる役も、ジャニーズ俳優が演じると、性欲と暴力性が内在する等身大の男らしさと、キラキラとした王子様性が同居した魅力的な青年となる。それこそ、クドカン×ジャニーズという組み合わせの妙だ。

 バカっぽさの奥に繊細な内面が透けて見えることも重要だ。そのような男の子像は『木更津キャッツアイ』の岡田准一から『JOKE』の生田斗真まで脈々と続いている。

 そんなジャニーズ俳優の中でも、やはり長瀬は別格だ。明るい笑いと暗い暴力性が同居する彼の存在感は唯一無二のものである。そんな長瀬と宮藤の最新作がいよいよ放送される。

 『俺の家の話』のあらすじを読んでいると、宮藤も長瀬も随分、年をとったなぁと思う。若い時に『池袋』で組んだ二人が、21年後に老いをテーマにしたホームドラマを作っていることが、ファンとしてはとても嬉しい。

■成馬零一
76年生まれ。ライター、ドラマ評論家。ドラマ評を中心に雑誌、ウェブ等で幅広く執筆。単著に『TVドラマは、ジャニーズものだけ見ろ!』(宝島社新書)、『キャラクタードラマの誕生:テレビドラマを更新する6人の脚本家』(河出書房新社)がある。

■放送情報
金曜ドラマ『俺の家の話』
TBS系にて、2021年1月スタート 毎週金曜23:00~23:54放送
出演:長瀬智也
脚本:宮藤官九郎
演出:金子文紀、山室大輔、福田亮介
プロデューサー:磯山晶、勝野逸未、佐藤敦司
製作:TBSスパークル、TBS

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