台湾でも日本映画歴代1位に 『鬼滅の刃』が創出する「新時代」の世界興行

『鬼滅の刃』が創出する「新時代」の世界興行

 先週のコラム(参考:来春までハリウッド映画は公開されない!? 本国で『ナイル殺人事件』『フリー・ガイ』の公開延期が発表)では、北米で『ナイル殺人事件』『フリー・ガイ』の公開延期が発表されたことに触れたが、ようやく今日(11月12日)になって、日本でも両作の劇場公開が2021年に持ち越されることをディズニーの20世紀スタジオが発表した。本国発表とかなりタイムラグがあったことから、ディズニーの本社と日本の支社の連携が平時通り緊密にとられているのかどうかが気になるが、ディズニーのプロパー作品である『ムーラン』や『ソウルフル・ワールド』のようにディズニープラスによるストリーミングでの公開に直送りとならなかったことは、興行界的にはまずは朗報と言っていいだろう。ちなみに、現時点でワーナーの『ワンダーウーマン 1984』は2020年12月25日世界同時公開のアナウンスを出したままだ。今後も注意深くその推移を見守っていきたい。

 先週末の動員ランキングについては、既に他のメディアも散々報じているので簡単に数字を挙げていこう。4週連続で1位となったのは『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』。土日2日間で動員129万6000人、興収17億7300万円。11月8日(日)の時点で累計動員は1537万人、累計興収は204億円を突破し、2001年12月公開の『ハリー・ポッターと賢者の石』を抜いて歴代興収ランキング5位となった。動員も興収も2位の『罪の声』に対して約16倍の数字で推移していて、そろそろ公開から1カ月となるウィークデイもその勢いは落ちていない。

 海外では最も早い10月30日に公開された台湾でも、『鬼滅の刃』は公開以来ずっとトップを独走していて、11月10日(火)までの12日間の累計興収は2億9351万台湾元(約10.8億円。ちなみに台湾の人口は日本の約6分の1)。早くも、2016年公開の『君の名は。』を抜いて台湾における日本映画興行の歴代1位となった。

 台湾での興行を見てもわかるのは、『鬼滅の刃』の異例尽くしの興行は日本だけの現象ではないということだ。アメリカのメジャースタジオの新作映画の供給が止まってしまったことによって、タマ不足が起こっているのは日本の興行界だけではなく、現在通常通り映画館の営業をしている各国共通の問題。2020年12月から2021年2月にかけて、『鬼滅の刃』はタイ、インドネシア、ベトナム、フィリピンなどアジア各国で公開される予定だが、その時期までに現在のハリウッド映画の状況が改善しているとは考えにくく、国によっては異例の規模での公開が実現するかもしれない。いわば「鬼の居ぬ間の洗濯」(鬼滅だけに)的な市場独占が海外でも起こりうる可能性があるのだ。

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