海宝直人、『エール』に圧倒的実力者として登場 吉原光夫が“パイセン”と呼ぶその素顔とは?

海宝直人、ブレない実力者の魅力

 これまで彼に何度かインタビューさせてもらって最初に思い浮かぶのは「ブレがない軸を持ちしっかり立っている人」という印象。変な軽さやふわふわした雰囲気がなく、毎回安定感が凄い。かといって、ただ真面目なだけでなく、ボケもツッコミも成立させるパーソナリティであり、イケメンというより「ハンサム」という呼称が似合う(褒めてます)。

 あるミュージカルのゲネプロ(最終舞台稽古)取材に行った際、舞台上でコーヒーがこぼれる事態があり、役柄を活かしての彼の回収が見事過ぎて、それが本当にアクシデントだったのが、それとも演出として決まっていたことだったのかがわからず後で聞いたところ「あれはアクシデントですね」とスっと答えられ、流石、海宝直人と思ったこともある。

 大作ミュージカルでつねに大役を担う海宝直人の今の位置……それは多分、簡単に手に入れたものではない。大人の俳優としての復帰作となった『ミス・サイゴン』ではアンサンブルとして作品を支え、その後も大舞台で主役を担うまでさまざまな現場を経験している。その中では悔しいことや理不尽なこともきっとたくさんあっただろう。実力のあるプレイヤーが必ずしもすぐに報われるわけではないのがライブパフォーマンスの世界である。

 そういう海宝だからこそ、本人たちはまったく意図していなかったとはいえ、有名作曲家である夫・裕一のコネで主演の座を射止めた音に対して苛立ちや何とも言えない感情を抱える伊藤役を的確に、そして厚みのある人物として演じられるのだと思う。『エール』内で伊藤は出番の多い役ではないが、大人の事情やコネを実力で凌駕する表現者の代表として存在しているのだ。

 『エール』第104話では音がある決断をする。その行方とミュージカル俳優として着実に、そして誠実に歩んできた海宝直人がオペラ歌手・伊藤幸造をどう演じ、作品にどんな風を吹かせるのかしっかり見届けたい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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