自分の人生を振り返らずにいられない 『PLAY 25年分のラストシーン』ビデオ映像の演出が生む効果

ビデオに映し出された日常の幸せ

 また、家電製品やファッションなど、小道具にもこだわることで時代の空気を伝えているが、なかでも重要な役割を果たしているのが音楽だ。レニー・クラヴィッツ「Fields Of Joy」、アラニス・モリセット「ironic」、ジャミロクワイ「Virtual Insanity」など、ヒット曲が映画の随所に登場。パリのストリート・ミュージシャンたちがこぞって演奏し、マックスたちが車の中で合唱するオアシス「Wonderwall」は、世界的に90年代ロックのアンセムだったことを実感した。

PLAY 25年分のラストシーン

 また、90年代を代表するフランスの人気アイドル、エレーヌ・ロレ「Pour l'amour d'un garcon」の使い方もうまい。少女だった頃のエマが、部屋でブラシをマイクがわりにしてこの曲を歌い、その横でマックスがエマの服を着ておどける。時は流れて20代になったエマ。パーティーでDJが彼女が好きなエレーヌの曲をかけてくれて大喜び。二人は熱いキスを交わすが、その様子をビデオで撮っていたマックスが落ち込んでいるのが、揺れるビデオ画像から伝わってくる。エマとは友達のままでいようと思っていたマックスだが、どこか割り切れないところがあった。

 映像を通じて25年を振り返り、自分の大きな失敗に向き合うマックス。この映画はただ、過去を振り返って感傷に浸る物語ではない。25年分のビデオ映像を通じて本当に自分が必要としていたものに気づいたマックスは、人生を変えるためのアクションを起こし、それがドラマティックなラストシーンにつながっていく。これまでビデオ画像は、その臨場感やリアルさからホラー映画に効果的に使われることが多かったが、『PLAY 25年分のラストシーン』はビデオに映し出された日常に幸せを見出す物語。誰もが映画を観ながら自分の人生を振り返らずにはいられないし、人生の主役は自分だということを教えてくれるだろう。

■村尾泰郎
音楽と映画に関する文筆家。『ミュージック・マガジン』『CDジャーナル』『CLUÉL』『CINRA.NET』など様々な媒体に執筆。『ラ・ラ・ランド』『君の名前で僕を呼んで』『WAVES/ウェイブス』など映画のパンフレットにも数多く寄稿する。

■公開情報
『PLAY 25年分のラストシーン』
11月6日(金)新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA、kino cinema立川高島屋S.C.館ほか全国順次公開
監督:アントニー・マルシアーノ
脚本:アントニー・マルシアーノ、マックス・ブーブリル
出演:マックス・ブーブリル、アリス・イザーズ、マリック・ジディ、アルチュール・ペリエ、ノエミ・ルヴォウスキー
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ日本
配給:シンカ、アニモプロデュース
2018年/フランス/108分/DCP/ビスタ/PG12/カラー/原題:Play
(c)2018 CHAPTER 2 – MOONSHAKER II – MARS FILMS – FRANCE 2 CINEMA – CHEZ WAM – LES PRODUCTIONS DU CHAMP POIRIER/ PHOTOS THIBALUT GRABHERR
公式サイト:http://synca.jp/play/

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