映画界に激震 もうディズニーは映画館を前提とした作品を作らない!?

ディズニーは映画館前提の作品を作らない!?

 アメリカの映画メディアIndieWireは今回の動きを受けて、「ディズニー、ストリーミングへの大転換。CEOは『映画やテレビが最も稼げる場所に行く』と語る」(参考:https://www.indiewire.com/2020/10/disney-pivots-to-streaming-as-ceo-says-films-and-tv-go-wherever-they-earn-the-most-1234592280/)という記事を掲載。その記事では「ディズニーの新しいビジネスモデルでは、映画の劇場公開は、その作品の壮大さ、映画賞を受賞する可能性、劇場主をサポートする必要性によっては決定されない。その基準となるのは金(ドル)だけだ」とかなり強い調子でディズニーの姿勢に疑問を投げかけている。

 一方、チャペックは「それらの決定を下すのは消費者です。彼らの意思決定が、私たちを新しい方向に導いてくれるでしょう」と語っている。『ムーラン』にせよ『ソウルフル・ワールド』にせよ、「劇場で観る」という選択肢さえ用意しないで何を言ってるんだという憤りを覚えずにはいられないが、チャペックに言わせれば、ディズニープラスがローンチから1年も経たないうちに、全世界で6050万人の加入者を獲得したという事実が「消費者の意思決定」ということなのだろう。ちなみに、ディズニープラスのサービスが開始される前に、ディズニーは投資家に2024年までの到達見込みを「6000万人から9000万人」と説明していた。つまり、ディズニープラスはその基準を4年以上も前倒しで超えたことになる。

 ストリーミングサービスへのシフトを加速させているスタジオはディズニーだけじゃない。というか、自社のストリーミングサービスをもっているディズニーはまだ存続の危機に瀕していないだけマシなのかもしれない。パラマウント・ピクチャーズは、『シカゴ7裁判』と『ラブバード』をNetflix売却、トム・クランシー原作マイケル・B・ジョーダン主演のポリティカルスリラー『ウィズアウト・リモース』をAmazonに売却。さらに、ちょうど日本時間の今日、「エディ・マーフィー主演の『星の王子 ニューヨークへ行く』の32年ぶりの続編『Coming 2 America』を約1億2500万ドルでAmazonに売却する見込み」というニュースが届いた。世界中の観客が何十年にもわたって親しんできた「ハリウッド映画」は、一体これからどうなってしまうのだろう?

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「集英社新書プラス」「MOVIE WALKER PRESS」「メルカリマガジン」「キネマ旬報」「装苑」「GLOW」などで批評やコラムやインタビュー企画を連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■配信情報
『ソウルフル・ワールド』
ディズニープラスにて、12月25日(金)より独占配信
監督:ピート・ドクター
共同監督:ケンプ・パワーズ
製作:ダナ・マレー
(c)2020 Disney/Pixar. All Rights Reserved.
公式サイト:Disney.jp/SoulfulWorld

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