『エール』『純情きらり』『とと姉ちゃん』など、朝ドラで“戦争と芸術”はどう描かれた?

朝ドラで戦時中の“芸術”はどう描かれた?

 文学、音楽、絵画等、ものを作っている登場人物たちが、戦争のとき、何を考え、どう行動するか。それを描く朝ドラも何作かある。男性主人公の『ゲゲゲの女房』は戦争で片腕を失くした主人公(向井理)が、戦争体験を漫画に描いて、後世に伝えていこうとする。彼の戦争体験は回想という形で描かれた。

 前述の『純情きらり』は、ヒロインがジャズピアノをやっていて、それが敵性音楽とされ、自由に弾けなくなる。また、彼女の音楽の先生(長谷川初範)も陸軍から軍歌を依頼されるが、できた曲が「軟弱」だと作り直しを要求され苦悩する。

 『花子とアン』では、ヒロイン(吉高由里子)は敵性語の英語の本を隠して翻訳の仕事を続ける。それがやがて名作『赤毛のアン』になる。ヒロインの作家仲間(山田真歩)は積極的に従軍記者として戦地に向かい取材する。

 『とと姉ちゃん』のヒロインの上司・花山(唐沢寿明)は戦時中、内務省に雇われて戦意高揚のポスターや標語づくりに、画才と文才を活かしたことを後悔し、戦後はその贖罪のような仕事をする。

 『純情きらり』には、『とと姉ちゃん』の花山のモチーフである『暮らしの手帖』の花森安治を模したような画家(相島一之)が登場し、やっぱり軍に協力したことの後悔を述べている。彼の友人でヒロインにとって生涯重要な存在となる画家(西島秀俊)も戦時中、社会情勢と自身の思いとの間で戦い続ける。『純情きらり』は主人公だけでなく、彼女を取り囲む人たちが芸術に携わっていて、ものを作る者たちが創作という自由を阻まれたりコントロールされたときどうするかが描かれていて見応えがある。

 『エール』では、軍に協力したくない鉄男や木枯、一度は召集されたが健康上の問題で取り消しになった歌手・久志(山崎育三郎)の今後も気になるし、戦後はGHQの統制下で、 日本の再出発、新しい時代の演劇を作ろうとする池田(北村有起哉)が現れてくる。戦争の経験が主人公たちの行動をどう変えていくか。

■木俣冬
テレビドラマ、映画、演劇などエンタメ系ライター。単著に『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説なつぞら 上」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など、構成した本に「蜷川幸雄 身体的物語論』(徳間書店)などがある。

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみ、佐久本宝、菊池桃子、森山直太朗、森七菜、岡部大、薬師丸ひろ子ほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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