A24×プランBのタッグ作『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』で“アメリカの今”を知る

『ラストブラックマン~』で“アメリカの今”を知る

 リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、A24グッズの新作を待ち望んでいる島田が、『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』をオススメします。

『ラストブラックマン・イン・サンフランシスコ』

 

今や映画ファンなら誰もが知っている映画製作スタジオA24と、ブラッド・ピット率いるプランBエンターテインメントの共同製作というだけで、期待高まる本作が公開を迎えました。ちなみにA24とプランBのタッグは、あの『ムーンライト』以来となります。

 前述の『ムーンライト』然り、『それでも夜は明ける』や『バイス』など政治的なトピックも扱ってきたプランBですが、本作にもそうした精神性は受け継がれています。サンフランシスコのベイエリアを舞台にした本作は、ジミー・フェイルズとその親友・モントが、ずっと過ごしてきた街が、富裕層の参入によりその面影を失っていくのをなんとか守ろうとする様を描いています。

 ちなみにジミー・フェイルズは実名で、主演俳優の名前がそのまま用いられています。ジミーもまた本作の舞台であるサンフランシスコは、フィルモア地区で生まれ育っています。もともとアフリカ系アメリカ人や移民の文化が色濃く残っていたフィルモア地区もまた、劇中同様これまで住んできた住民やそのコミュニティが立ち退きの憂き目にあっています。そんなジミーが主演を務め、その親友であるジョー・タルボット監督がクラウドファンディングで作り上げた短編が、たまたまプランBの目に留まったことで長編となったという経緯を持つ本作。つまり、極めてパーソナルな目線で、地域の高級化・都市の富裕化(ジェントリフィケーション)を捉えた作品ということです。

 一見するとごく普通の街ですが、その街に幼少期から浸っているからこそ見える風景というものが、スケートボードやバスといったツールを通して、本作では映し出されています。「何もない」と話す女子たちやギャングスタ、そして新しく参入してきた富裕層、儲けることしか頭にない不動産屋……。当たり前ではありますが、「街」というものがあらゆる多種多様な人たちの集合体であることが思い起こされます。「多様性」ということはこれまでも幾度となく議論されてきていますが、ミクロな視点で追体験することによって初めて見えてくるものは多いにあるでしょう。その点において、個人的にはスパイク・リー監督の『ドゥ・ザ・ライト・シング』を思い出したりしました。

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