『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開延期がもたらしたセカンドインパクト

『007』公開延期によるセカンドインパクト

 『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期が発表されると、世界2位のシネコンチェーンであるCineworldは、営業再開していたイギリスとアイルランドの128館、及び同社が運営する北米2位のシネコンチェーンRagal Cinemasの営業再開していた約400館のうち65館の一時閉鎖を決定。関係者によると「この閉鎖がいつまで続くのかはわからいが、現在も大作映画が公開されていないので、映画館はまったく儲かっていない」とのこと(参考:https://geektyrant.com/news/regal-cinemas-is-closing-down-its-movie-theaters-again-after-no-time-to-die-postponed)。観客にとっては、映画館に行ってもやってるのかやってないのかわからないような状況が当面続くわけで、客足への心理的な悪影響も予想される。

 Cineworldは20年上半期に16億ドル(約1690億円)の赤字を計上し、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期が発表された先週末には、ジョンソン英首相に宛てた書簡で「大作の公開遅延で営業が不可能になった」と伝えたという。また、全米劇場所有者協会は新型コロナウイルスのパンデミックで米国の中小の映画館のうち約4分の3が経営破綻の危機にさらされていて、同業界で働く約10万人が失職する可能性があると指摘している(参考:https://www.nikkei.com/article/DGXMZO64652320W0A001C2000000/?n_cid=SNSTW001)。もちろん、これは海の向こうだけの話ではない。今年3月から丸1年、ほぼすべてのハリウッド大作の公開が止まるということは、今年6月に営業を再開して以降、なんとか日本映画のヒット作でしのいできた日本の映画興行にも、(既に大きなダメージを受けているが)時間差でとてつもない大打撃を与えることになるだろう。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』
2021年公開予定
監督:キャリー・フクナガ
製作:バーバラ・ブロッコリ、マイケル・G・ウィルソン 
脚本:ニール・パーヴィス、ロバート・ウェイド、スコット・バーンズ、キャリー・フクナガ、フィービー・ウォーラー=ブリッジ
出演:ダニエル・クレイグ、レイフ・ファインズ、ナオミ・ハリス、レア・セドゥ、ベン・ウィショー、ジェフリー・ライト、アナ・デ・アルマス、ラッシャーナ・リンチ、ビリー・マグヌッセン、ラミ・マレック
配給:東宝東和
(c)Danjaq, LLC and Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.All Rights Reserved.
公式Facebook:www.facebook.com/JamesBond007
公式Twitter:https://twitter.com/007

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