『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』公開延期がもたらしたセカンドインパクト

『007』公開延期によるセカンドインパクト

 先週末の動員ランキングは、中野量太監督、二宮和也主演作の『浅田家!』が土日2日間で動員12万6000人、興収1億7200万円をあげて初登場1位を獲得。初日から3日間の累計では動員20万2781人、興収2億8033万250円。二宮和也の単独主演作としては、2017年11月公開の『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』以来3年ぶりとなる本作。『ラストレシピ 麒麟の舌の記憶』の初週土日2日間の成績は興収1億3800万円だったので、今回の『浅田家!』は興収比で約125%。まずは好調なスタートと言っていいだろう。

 しかし、実は週末の興収では、全国のIMAX館をほぼ独占している公開3週目の『TENET テネット』が上回っていて、土日2日間で興収2億1000万円をあげて3週連続興収1位を記録している。10月4日までの17日間の動員は103万4649人、興収16億7453万1690円。早くも前作『ダンケルク』の最終興収を超えて、興収20億円突破も時間の問題となっている。

 さて、そんな日本映画と外国映画の新作同士がトップ争いを繰り広げるという「健全な日常」が戻ったかのようにも見える日本の映画興行だが、同じ週末、海の向こうでは大変な事態が起こった。11月20日に世界公開が決定していた『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開が再び延期。当初の公開予定日からちょうど1年遅れて、2021年4月に公開されることが発表された。もちろん、日本公開もそれに準じて大幅に遅れることとなる。

 「これまでもブロックバスター作品の公開延期はあったじゃないか」と思う人もいるかもしれないが、製作費2億5千万ドル、世界中で大ヒットが約束されている、ダニエル・クレイグがジェームズ・ボンドを演じるのは今回が最後となる『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』のここにきての半年近くの公開延期は、今年の3月以降休業が続いてきた世界各国の映画館にとって、首の皮一枚でつながっていた未来への展望を打ち砕くには十分のインパクトとなった。『ソウルフル・ワールド』(北米公開11月20日、日本公開12月11日)と『ナイル殺人事件』(12月18日日米同時公開)があるものの、その後も後追いで『DUNE/デューン 砂の惑星』の公開延期が発表されて、事実上、これで2020年3月以降の年内に世界公開されるハリウッド大作は、ノーランの意思を汲んで9月に公開が強行された『TENET テネット』と、12月25日に全米公開される『ワンダーウーマン 1984』という、ワーナー2作品のみに。『ワンダーウーマン 1984』もまだ予断を許さない状況で、もし年内に公開されるとしても、北米では配信との同時公開になるのではないかと予測する声が上がっている。

 実際、ニューヨーク州やカリフォルニア州といった主要マーケットがまだ閉まっているアメリカだけでなく、ここにきてイギリスでもフランスでもスペインでも新型コロナウイルスの感染者数が再び上昇傾向にあって、ノー・タイム・トゥ・ダイ(死んでる場合じゃない)ならぬノー・タイム・トゥ・プレイ(上映してる場合じゃない)との今回のユニバーサルの判断は致し方ないところ。公開再延期発表の数日前に劇中シーンをたっぷり盛り込んだ主題歌のミュージックビデオを発表したばかりのビリー・アイリッシュにとってもたまったもんじゃないだろうが、作品の「母国」であるイギリスでの感染状況の悪化は、特に『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』の公開延期に大きく影響したと思われる。

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