三浦春馬さんでなければ成立しなかった慶太の魅力 『カネ恋』が描く“ほころび”の普遍性

『カネ恋』が描く“ほころび”の普遍性

 慶太はとても難しい役だ。恵まれた環境で育った天真爛漫さと父親に認められたい、愛されたいという渇望が同時に存在している人物。そしてこのキャラクターに何より大事なのは“人から自然と愛される”空気を醸すことである。ランチにお弁当を3つ買おうが、88000円のアロハを無造作に購入しようが、仕事をせずお菓子を食べていようが、慶太が“どこか憎めない”存在でなければ本ドラマは成立しない。

 三浦さんはまさにそれを体現している。慶太は天然で他者の気持ちを汲み取り切れないところもあるが、基本は善の人。行動にまったく悪意がない。邪気のない笑顔で人の懐にスっと入っていく様子は誰からも愛される大型犬のようである。この空気感は演技だけでは立ち上げられないし、本人の資質だけでも立体化できない。三浦さんは演技力と持ち前の愛らしさとを上手く掛け合わせ、慶太というキャラクターを非常に魅力的に見せている。

 特に笑顔がいい。自分のためだけでなく、他者の喜びや幸福を肯定し顔全体でハッピーを表現するあの笑顔。まさに慶太、いや三浦春馬そのものだと思う。

 『おカネの切れ目が恋のはじまり』のO.A.はあと2回。登場人物たちがみずからの「ほころび」とどう向き合い、それをどう縫い合わせていくのか注目しながら、自分の中にある「ほころび」にもそっと目を向けてみたい。

■上村由紀子
ドラマコラムニスト×演劇ライター。芸術系の大学を卒業後、FMラジオDJ、リポーター、TVナレーター等を経てライターに。TBS『マツコの知らない世界』(劇場の世界案内人)、『アカデミーナイトG』、テレビ東京『よじごじDays』、TBSラジオ『サキドリ!感激シアター』(舞台コメンテーター)等、メディア出演も多数。雑誌、Web媒体で俳優、クリエイターへのインタビュー取材を担当しながら、文春オンライン、産経デジタル等でエンタメ考察のコラムを連載中。ハワイ、沖縄、博多大吉が好き。Twitter:@makigami_p

■放送情報
火曜ドラマ『おカネの切れ目が恋のはじまり』
TBS系にて、毎週火曜22:00~ 22:57放送
出演:松岡茉優、三浦春馬、三浦翔平、北村匠海、星蘭ひとみ(宝塚歌劇団)、大友花恋、稲田直樹(アインシュタイン)、中村里帆、八木優、河井ゆずる(アインシュタイン)、キムラ緑子、ファーストサマーウイカ、池田成志、南果歩、草刈正雄
ゲスト出演:梶裕貴、岡本莉音、トミー(水溜りボンド)、登坂淳一
脚本:大島里美
演出:平野俊一、木村ひさし
プロデュース:東仲恵吾
主題歌:Mr.Children「turn over?」(トイズファクトリー)
製作著作:TBS
(c)TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/KANEKOI_tbs/
公式Twitter:https://twitter.com/kanekoi_tbs

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