『TENET』、ノーラン史上最高の出足で初登場1位 『ブラック・ウィドウ』は来年までお預け

『TENET』、ノーラン史上最高の出足に

 ハリウッド大作の穴を自国の作品がある程度埋めている日本とは比べものにならないほど、アメリカの映画界の状況は深刻だ。『ワンダーウーマン1984』の公開再延期に続く今回の『ブラック・ウィドク』の公開再延期で、アメリカでも11月20日公開の『007/ノータイム・トゥ・ダイ』、そして同日公開の『ソウルフル・ワールド』(日本公開は12月11日予定)までブロックバスター作品がなくなった。現在、北米の映画館の興行収入は週に約1500万ドル。11月20日までの8週間で、仮にその間にロサンゼルスやニューヨークの映画館の営業が再開されたとしても、起爆剤となる新作がないため、多くて2億4000万ドルの興行収入しか見込めないという(参考:Black Widow Delayed as Disney Mostly Backs Out of 2020 | IndieWire)。これは、昨年の同時期の興行収入、15億ドルの6分の1以下の数字だ。

 映画ファンにとって一つだけ朗報と言えるのは、今のところディズニーが来年5月公開の『ブラック・ウィドウ』はもちろんのこと、ファミリー向けのアニメーション作品『ソウルフル・ワールド』もディズニープラスでの配信ではなく、映画館での公開を予定していることだ。『ムーラン』の結果次第では業態の軸足をディズニープラスに大きく移す可能性も報じられていただけに、まずは一安心といったところだろうか。それでも、今後数週間で何が起こるのか誰にもわからないのが「2020年」なわけだが。

■宇野維正
映画・音楽ジャーナリスト。「装苑」「GLOW」「キネマ旬報」「メルカリマガジン」などで批評やコラムを連載中。著書『1998年の宇多田ヒカル』(新潮社)、『くるりのこと』(新潮社)、『小沢健二の帰還』(岩波書店)、『日本代表とMr.Children』(ソル・メディア)。最新刊『2010s』(新潮社)発売中。Twitter

■公開情報
『TENET テネット』
全国公開中
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
製作:エマ・トーマス
製作総指揮:トーマス・ハイスリップ
出演:ジョン・デヴィッド・ワシントン、ロバート・パティンソン、エリザベス・デビッキ、ディンプル・カパディア、アーロン・テイラー=ジョンソン、クレマンス・ポエジー、マイケル・ケイン、ケネス・ブラナー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)2020 Warner Bros Entertainment Inc. All Rights Reserved
公式サイト:http://tenet-movie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/TENETJP

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