映画興行正常化、9月19日から全席販売が再開! 一方、先が見えないアメリカでは?

映画興行正常化、一方アメリカでは?

 映画関係者、興行関係者にとって、遂に待ちに待った日がやってきた。9月11日(金)の新型コロナウイルス感染症対策分科会の後におこなわれた会見で、西村康稔経済再生相は9月19日(土)以降のイベントの人数制限を緩和することを発表。それを受けて、6月以降、観客数を定員の50%以下に抑えて順次営業再開をしてきた全国の各シネコンチェーンやミニシアターの一部が、9月19日の上映分から全席販売を再開した。もちろん、各劇場は引き続きできる限りの感染予防対策を続けていくことになるわけだが、新型コロナウイルスの観客動員への影響が顕著になってきた3月半ばからちょうど1年の半分、半年間という期間を経て、ようやく映画興行が正常化することになる。ひとまずは「めでたい」としか言いようがない。

 ちょうど全席販売が開始される9月19日の前日である9月18日、2020年最大級の話題作にして、「映画館復活」を象徴するような「映画館で観なければ話にならない作品」、クリストファー・ノーラン監督の新作『TENET テネット』が公開される。日本公開日は昨年の段階から決まっていたのでまったくの偶然ではあるのだが、この機運にのって、是非ともノーラン作品過去最高記録を更新してほしいものだ。

 これまで日本で最も客が入ったノーラン作品は『ダークナイト』(興収16億円)でも『ダークナイト ライジング』(興収19.7億円)でも『ダンケルク』(興収16.4億円)でもなく、「レオナルド・ディカプリオと渡辺謙の共演」というトピックが効いた『インセプション』(興収35億円)。名優デンゼル・ワシントンを父に持つとはいえ、日本ではほとんど無名の(というか、数年前までプロのアメリカンフットボール選手だった)ジョン・デヴィッド・ワシントンが主演の完全オリジナル作品で、もし『インセプション』の記録を更新するようだったら、日本でのノーラン人気も本物だ。ちなみに『TENET』は『インセプション』よりもさらに話が複雑だぞ! がんばれ!

 と、超待望の『TENET』の公開直前ということで浮かれているが、こうして浮かれることができるのも日本の映画館が全席販売の段階に進むことができたからで、製作国にして少なくとも本作に関しては間違いなく世界最大マーケットであったはずのアメリカではまったく逆の状況となっている。既にアメリカを含む世界各国で劇場公開が始まっている『TENET』だが、公開から3週間で全世界で2億700万ドル以上の興収を上げている一方で、同期間のアメリカ国内でのワーナー・ブラザースの映画配給による総収入は3000万ドルを下回っている。『TENET』のアメリカ国内の興行成績に関しては、パンデミック後のブロックバスター作品公開に及び腰になっている同業他社の指標とされることに難色を示したワーナーが数字の提供を拒否している(これに関しては、勇気ある公開に踏み切ったワーナーを支持したい)が、ニューヨーク・タイムズの記事によると最初の週末に940万ドル、2週間で2950万ドルの興収にとどまっているとのこと。はっきり言うと、これはまったく期待に届いていない数字だ。

 理由ははっきりと二つ。一つは、アメリカ国内のトップ2のマーケットであるロサンゼルスとニューヨークの映画館が、行政命令によってまだ営業再開できていないから。日本でいうなら東京圏と大阪圏の映画館が営業再開していない状況で公開されたわけで、これはいかんともしがたい。

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